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肝芽腫の会3

まず最初に謝らなければなりませんが、今回もまた長くなってしまいました。一番長いです。でも昨日の会見のこととか、次のお題も出てきて後が詰まっているので、この話をいつまでも引っ張る訳にも行かず、気合い入れて書き上げました。しかしそれにしても長いので、携帯でご覧の方は電車やトイレのお供として、または眠れぬ夜の睡眠薬代わりに、何回かに分けて読んでいただければと思います。

 

ということで、先々週の土曜日、1年9ヶ月ぶりに『肝芽腫の会』に参加させてもらってきました。

トレーニングの都合で少し遅れての参加となったんですが、俺が到着して間もなく話題に上ったのが、幼少期に受けた腹部の手術痕は成長していくに従ってどうなるのかということで、そこで俺が経験者として「身体に対しての術痕の大きさの割合は変わらないですよ」と話したんですが、皆様の熱い熱いリクエストにより、その術痕を披露することになりました。

大勢の前でパンツ一丁になる職業のワタクシですから、10人20人の前で腹を見せるなんてどうってことないよとばかりに、サクッと披露してやりましたぜ。「しっかりトレーニングしていて良かった……」なんて思いながら。だって、見せたときに腹筋が割れていなかったらカッコ悪いですからね。と言っても、俺の腹筋は左半分しかないんですが。

俺は1歳で手術を受けたときに、腫瘍を摘出する際の障害になるということで、右の肋骨を2本外されたらしいんですね。だから今も、人より肋骨の数が少ない。そしてその影響で、俺は右側の腹筋が殆どありません。腹筋が付いている骨を取っちゃったんでしょうね。

でも90kgとか83kgで試合をしていたときは、腹筋もそんなに、というか殆ど浮き出ていなかったし、だから腹筋が片方無いということに気付く人もいなかったと思うんですが、UFCで試合をしたときに、計量をクリアして体重計の上でポーズを取っている俺の写真について、海外の格闘技サイトの掲示板で「ゴーノの腹筋はスリーパック(6つに割れた腹筋のことを“シックスパック”と呼ぶので)しかないじゃないか!残りのスリーパックはどこに行ったんだ!?」といった書き込みがされていて、ついに気付かれるときが来たなぁと思ったもんです。まぁどこに行ったも何も、最初から無いんですけどね。

でも、これは競技者としては本当に悔しいことなんです。格闘技を始めた頃から、右利きなのに左のほうが蹴りやすかったり、ウェイトでランジ(バーベルを担いで足を交互に前に出す種目)をしているときも、左足を前に出したときと右足を出したときの感覚の差が激しくて、左はバチッと決まるのに右は上手く力が入らなかったり、そして何より、腹筋運動をやっていても左しか効かないというか疲れない。何でだろうなぁってずっと思っていたんですが、腹筋が片方無いせいだったんですね。もうひとつ言えば、プロ野球選手を目指して毎晩ロードワークをしていた野球少年だった頃から、左を踏み出したときばっかり力感があって、極端に言えば右足を引き摺りながら走っているような感覚だった。

そうやって、これまでの数々の運動の際の左右差やバランスの悪さも、腹筋が原因と思えば全て合点が行って、野球でも格闘技でも、それがなかったらもっと上手く強くなれていたんじゃないかって思えてきたんですが、そうハッキリと気付いたのは今年に入ってからでした。和田のおっさんとのトレーニングの中で、それぞれの運動に於ける身体の正しい使い方というものを教わり、それを自分で意識してやっていく中で、身体全体の神経というか、感覚が研ぎ澄まされてきて、それで34歳にしてようやく気付いたんです。ちょっと遅いですよね。。。

そしてそう気付いたのが連敗の最中で、その連敗を理由にUFCを自由契約になった後だったこともあって、凄い悔しさを覚えました。俺も腹筋が人並みにあれば、きっともっともっと運動能力が高かったはずだ、もっと強かったはずだ、きっとプロ野球選手にもなれていたんじゃないかって、そう思えて仕方なくて。

でも、会で自分の腹部の術痕を披露しながら、「自分は手術のときに摘出の邪魔になるからって肋骨を外した影響で、右の腹筋が無いんですよ」という話をしたら、会に参加されていたドクターが、

「今なら化学療法で腫瘍を小さくしてからオペをしますから、肋骨を外すということはないんですが、30年以上も前は化学療法も今よりも全然発達していない時代でしたから、そういう方法しか無かったんですね。でもその時代で、肋骨を外さないと取れないほどの腫瘍で助かったのというは、本当に珍しいケースですね」

という話をされたんですね。それを聞いて、悔しさばかりを感じていた自分を、一瞬にして深く反省しました。

腹筋が無くて悔しいけど、でもそのお陰で今の自分がこうして存在していられるんだし……と、漠然とは思っていたものの、今回、反省の気持ちになったということは、やはり自分の命の有難さをそこまで感じることなく、腹筋の無い悔しさばかりを感じていたからでしょう。でもドクターの話を聞いて、自分の命がどれだけの幸運に恵まれた結果として存在しているのかということを改めて実感し、そして今回のそれは、決して誰かと比べてという相対的なものではなく、絶対的な自分の命の重さ尊さであり、それに対する感謝の気持ちでした。この間、夜にベランダに出たときに幸せを実感したとか書いたけど、そうやって毎日の生活の中で色々なことを感じたり考えたりできるのも、その33年前の手術のお陰でいま俺がこうして生きていられるからであって、そう考えたら、腹筋が片方しか無いなんて小さなことないじゃないか。

と、自分にとって大切なことを再認識することができ、それだけでも会に参加して良かったと思っていたんですが、他にも嬉しいことがありました。

後日、前回書いた会の中学生の男の子のお母さんからメールを頂いたんですが、そこに「息子は郷野さんとたくさん話せたのがとても嬉しかったようで、何度も「楽しかった!」と言ってました」とあったんですね。

会に参加させてもらうようになった最初の動機が、俺と同じ病気の子や、それを経験した子たちのヒーローになって、子供たちにやる気元気いわき勇気を与えられたら、というものだったから、俺と話して「楽しかった!」って言ってもらえるのは凄く嬉しい。でもそれは、別に俺が格闘技の選手だからということではなく、普段なかなか話す機会のない、親よりももう少し若い大人と話すのが楽しかったっていうものかも知れなくて、俺が最初に意図していたものとは違うかも知れないけど、それでもやっぱり嬉しくて、これからも色々なことを頑張って、そうやって言ってくれる子に失望されることのないような、立派な男にならなきゃなって思いました。そしてそんな理想像に一歩でも近づくには、この助けてもらった貴重な命の炎を精一杯燃やして生きていくしかない、それはただ長生きするとかいうことではなく、かと言ってこの大切な命を粗末にする訳でもなく、自分の情熱を傾けられるものに全身全霊を傾けて取り組み、濃い毎日を送っていくことだと思い、

「人の一生というのは、たかが五十年そこそこである。いったん志を抱けば、この志にむかって事が進捗(しんちょく)するような手段のみをとり、いやしくも弱気を発してはいけない。たとえその目的が成就できなくても、その目的への道中で死ぬべきだ。生死は自然現象だからこれを計算に入れてはいけない」
「男子は生ある限り理想を持ち、理想に一歩でも近づくべく坂をのぼるべきである」

という『竜馬がゆく』の一節を思い出して、燃えてきたり。

そのように、会に参加することによって、今は俺のほうが色々と勉強させてもらったり気付かせてもらったりしているので、今はもう「俺が勇気を与えられるような存在になれれば!」なんて思いはなくなりました。それって大いなる勘違いだったんじゃないかと思うくらいです。寧ろ、力を貰っているのは俺のほう。なので会の皆さんには、格闘技に詳しくないから格闘技の話を聞くことができなくて申し訳ないとか、そんなことはこれっぽっちも思っていただく必要はありません。会に参加させてもらい、会の後に皆さんと一緒に食事をしながら色々とお話させてもらって、俺のほうこそ、俺の人生にとって明らかプラスになるような良い時間を過ごさせてもらっています。

そうやって、会の皆さんとの時間から色々と気付かせてもらい、そして力を頂いた、11月よりも充実している俺で、まずは大晦日、しっかりと頑張りたいと思いますが、そうそう、こうやって右側の腹筋が無いなんて書くと、じゃあ郷野はレバー打ちに弱いんじゃないかと思われるかもしれませんが、そんなことはないんです。というか、寧ろ俺はレバーを打たれても他の人よりも効かないんですよ。肝臓は唯一の再生する臓器とはいえ、人並みの大きさまでには戻っていないのか、それとも手術の影響で神経に何か問題でもあるのか、とにかくレバーを打たれて効いたことが一度もない。野木さんにレバー打ちへの耐性を付けるためということでレバーをコツコツ叩かれても全く何も感じず、他の人が十分苦しがるくらいの強さで打っているんだけどなぁと、野木さんも不思議がっていましたが、きっと手術の影響じゃないかと思うんですよね。

ということで、ボディ打ちの得意なマッハのレバーブローを喰ったとしても全然平気だから、マッハよ、遠慮なくどんどん打って来いや!

 

3回に渡って長文駄文にお付き合い頂き、本当にありがとうございました。なんか最近、自分の命の有難さを思い、一生懸命に生きなきゃと思うほどに色々と書きたくなってきています。なんて言うんですかね、命の有難さを思えば思うほど、もし明日、不慮の事故や天災に見舞われてこの命を落としたとしても悔いのない毎日を送らなきゃと思い、自己の存在を他人に認められたときに大きな喜びを感じる生き物の一人として、そして前回の試合後に頂戴したコメントの中の「パワー貰いました」「その生き方に触発され、支えられ、自分の苦しみを投影させ…」という言葉に背中を押され、俺に興味を持ってくれている人たちに、少しでも俺の胸の内を知ってもらいたいと思うようになっています。中高生の頃、「この気持ちを伝えないまま、もし明日死んじゃったとしたら絶対にイヤだ!」なんて思って好きな女の子に告白してあえなく撃沈、寧ろ今すぐ死んでしまいたいという気持ちによくなっていた、そんな性格がまた表に出てきているのでしょうか。だとしたら、あの頃と同じ気持ちで、近いうちに密かに思いを寄せるあの人にアタック……は絶対にできませんけどね。なので、近いうちにもし何かが起こったとしたら、俺はその思いを告げぬままこの世を去って行くことに……む、無念。

ともあれ、3回とも最後までお付き合い頂いた方は、相当な兄さんサポーターだと思います。だって、あんま興味なかったら絶対にこんな長いのは読まないですからね。重ねて厚く御礼申し上げます。

そして次回は、昨日の会見のことなんかを書きますね。ええ、もっと簡潔に。

では!

 

写真はUFCのサイトからお借りした、見事にスリーパックな俺と、見事に俺に興味なさそうなラウンドガール。PCでは写真がデカ過ぎて枠からハミ出てしまっている上にラウンドガールが見切れていると思うので(ダイヤモンドブログさん、コレ上手く調整できないんですか?教えてください!)写真をクリックして確認していただくとして、携帯ではよく見えるはず。SEXY?

スリーパック


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郷野 聡寛(ごうのあきひろ)
体格:176cm 78kg(試合時体重70kg)
経歴:第4代全日本キックボクシング連盟ヘビー級王者、PRIDEウェルター級GP2006第3位
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