イタリア・ミラノ紀行 その4
イベント当日。
開始は夜の九時とひどく遅くて、実にイタリアっぽい。
午前中はホテルの近くにあった小川に沿って散歩する。
お爺さんが大きな椅子に座ってウツラウツラと日向ぼっこをしている。
仲の良さそうな父娘が自転車を連ねて走っていく。
名も知らない小さな花が春の風に揺れていた。
のどかだなぁ。
いつもカリカリしているフロントのおねーさんの事も、
沙悟浄が、ここは俺の縄張りだと妙に威張り散らしてる現場も、
詐欺みたいな手口で俺にミサンガを売り付けたアフリカン逹も、
何だか遠い昔に思えるくらい、のんびりとした散歩だった。
夕方になると急にバタバタしだした。
ま、お決まりの迎えのバスが来ない。
せっかく厳重なセキュリティがあるのに、結局パスが間に合わなくて素通り。
なんてことは海外のイベントでは当たり前だから俺は動揺なんかしない。
オフィシャルの控え室が無くたって、前半部分の地元のイベントを見ていれば満足さ。
既に会場は満員。
派手な演出にお客さんのボルテージも上がっている。
俺の仕事で一番大事なことは、
誰の目からも分かりやすく、正しいジャッジメントをすること。
それに必要なことは常に冷静でいなければならない。
だからどんなに会場が盛り上がっていたって、
どんなに地元のヒーローが出ていたって、
やることは毎回変わらない。
ただ淡々と、
ルールに沿って試合を進行する。
それが俺の仕事。