責任を果たすということ。
長男が入籍のお祝いってことでささやかな宴を企画してくれた。
お前が生まれた頃、俺はまだ現役の選手で
その上、自分のジムを出したばかり。
今思えば、もっともっと
やってあげなきゃいけないこと、
やってあげたいこと、
親としてたくさんあったのに全然出来なかった。
なのに良い子に育ったな。
今でも覚えてる。
もうずいぶんと昔の話。
二人で南房総を走った事があったな。
お前がまだ高校生で、バリバリのバスケの選手。
でも俺もまだまだ体力に自信があった頃で、
二人で小さな漁村のある坂の下から駆け足の競争をしたな。
いつのまにか、
身長も変わらないくらいになっていたお前は、
懸命に走る俺をあっさりと抜いて坂の上で待っていてくれた。
そもそもそんな事を真面目に付き合ってくれたことに驚きだよ。
バカ親父が走って千葉を一周するって、アホな話に付き合ってくれたんだった(笑)
少し息を乱したお前は妙に男っぽくて、
あぁ、
もう俺の時代は終わった、って思った。
俺はお前に教わったよ。
他人より上にいくこと、
押し退けても上に向かうこと。
そんな事が正しい事だと思ってた。
でもお前は違ってた。
優しいお前はいつも他人の面倒を見て貧乏くじばかり引いていたな。
もどかしく思ったときもあるけど、
その優しさで良いお嫁さんを貰った。
それはそれは正しい事。
幸せになってほしい。
心からそう思う。
もう思う事しかできないけど、
それが最後の親としての責任かな、と。