網膜剥離。
プロボクシングではかかった選手は
引退しなくてはいけないというルールがあったほど、
格闘家にとって選手生命を左右する致命的な怪我です。
しかし、大山さんは不屈の闘志で回復。
敗戦から9か月後、PRIDE21で復帰しました。
相手はグレイシー一族の強豪・ヘンゾ・グレイシー。
この試合、大山さんは判定で勝利したものの、
消極的な試合ぶりに批判が集まりました。
当時のPRIDE、というよりも日本の総合格闘技界は
競技性よりもエンターテインメント性に重きがおかれており、
手堅く勝利するよりも派手に負けた方が喜ばれる時代でした。
この時の大山さんはデビュー戦勝利後、三連敗で崖っぷち。
また、網膜剥離からの復帰の道のりで支えてくれた方々のためにも
何が何でも勝利で恩返ししたいという気持ちだったのだと思いますが、
そんな事情は観客にとってはどうでもいい事だったのでしょう。
ベストを尽くして、強豪に勝利した
厳しい言葉を浴びせました。
同じ日のメインイベントでは、後に伝説として語り継がれる事になる
ドン・フライと高山善廣が魂のどつき合いで観客を沸かせました。
もしかしたら、大山さんはそこで”プロ”のなんたるかを感じたのかも知れません。
しかし、ただでさえ日本に世界の超一流の格闘家が集っていた時代に、
勝利するのみならず、観客を魅了する試合をする事は至難の業でした。
ここから大山さんの更なる苦闘の日々が始まります。