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功労賞のこと、あるいは最近の写真界のこと

昨日、賞をいただいたことを、このブログにアップしましたが、
名取さんが「編集長敬白」
http://rail.hobidas.com/blog/natori/
にもお書きくださるそうなので、もう少し詳しく記すことにします。


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受賞後、2分間スピーチがありました。
共に受賞した、桑原史成さんは、さすが上手に、分かりやすく2分でまとめられましたが、
私は若干オーバーしてしまいました!

内容は下のような趣旨。
この文量では、かなりオーバータイムになりそう・・・なので、実際のおしゃべりでは修正しました。

“こんばんは、広田です。
身に余る賞を頂き、ありがとうございます。
会長さんはじめ、日本写真協会の皆様に、心からお礼申します。
また、選考委員、関係者にも、お礼申します(本音です)。

私のデビューはおよそ50年前のフジフォトサロンでした。
プリントは、今回賞を受けられた写真弘社さん、めがねをかけた精悍な柳沢さんが担当してくださいました。
おかげさまで写真展は「サロン始まって以来の大盛況」と、
所長の大場栄一さんが語るほどでした。

以来、幾多の書籍や写真展を通し、私の作品に感動した、多くの広田ボーイズが誕生しました。
その影響が基になって、写真、映像業界で働くボーイズだけで、およそ1000人もいます。

とはいうものの、当初、写真雑誌や批評家の間での鉄道写真は、まったく問題視されませんでした。
大の男が電車ごっことはキ印だ。婦人科でもない社会科でもない、精神科だと。これは世の中の

風潮と一致していました。

しかし最近はカメラ雑誌が鉄道特集を組んだり、
テレビコマーシャルでは鉄道や鉄道ファンが登場するほど、メジャーな存在になって来ました。
世の中の推移、時代変化のおかげです。
したがって、このたびの賞は時代が頂戴したと私は解釈しています。

鉄道写真は趣味写真の一分野です。
趣味写真には鉄道同様、各分野に魅力溢れる作品と作品要素が存在し、
数の上でも写真界を代表する一大分野に成長しています。
専門分野ということで、評価の対象外におかれているのは、
写真普及、向上の面からも、残念なことです。

趣味写真はちょっとした知識と、勇気、愛情があれば理解に至ります。
皆さんのパワーや導きを期待して止みません。

本日は、ありがとうございました。”


大体このようなことをお話しするつもりでしたが、
修飾形容説明をするうち省略を怠り、後半の趣味写真のことは、ほんの一言しか触れられませんでした。

冒頭部分で、実は写真界からの賞は、今回が初めてですと語りましたら、
皆さん驚かれていましたが、事実です。

時代を変えたのは広田さん自身ではないですか、と終了後、暖かい声をかけてくださる人も

何人かいらっしゃいました。

ところで、今の写真界の主流はどのようなものでしょうか。
人物、ルポルタージュ、モノローグ、機材や色調の変化・・・、
多岐に渡っているようですが、私にはどうも行き詰まっているようにも見えます。
体から湧き出たものではないので規模も小さく、小手先作品が多いのも気になります。

私は今回感じたことは、比較ということが作り手側にも、発表媒体(主に雑誌)側にも、

批評する側にも存在し、
これが曲者になっているのではないかということです。

Aという既存の作品があったとします。そのよさに気づいたPという人が、Aをベースに、

たとえば色調に変化をつけて、Xという作品を作ったとします。
雑誌編集者は先月号に比べ、Xには新しさがあると採用。評論はこれまでの作品A,B,Cなどを

引き合いにしながら、Xを語ります。
すべてがこうとは言いませんが、このような比較の循環があるように感じます。
現代日本の写真は、おおむね比較文化である、と。
とりあえずそうしたものの善し悪しは別として、
そこにオリジナリティの存在はあるのでしょうか。

写真に感性が大事であることは言うまでもありません。
ルポルタージュの場合は、下調べも大事です。
鉄道撮影では安全への配慮が不可欠です。
そして物を制作する人にとって、もっともベーシックで大切なものは、オリジナリティだと

思うのですがどうでしょうか。
いま、自分の作品にはオリジナリティがあると胸をはれる人は、何人いるでしょうか。

作品のオリジナリティを発揮できる分野があります。
それは趣味写真です。
動物など、動きや表情の豊かな分野は、いい作品が存在しますが、
大部分は思い切った挑戦のできる分野です。
ほぼ未開の分野が多いのです。
なぜならそこには、比較(模倣)対象に値する作品がないので、ちょっとしたことでも、

オリジナリティにあふれた作品が制作できるのです。

同時にその世界も、新たな血流を感じる作品が現れたことで、
当然、作品比較が生じ、一定期間、その世界の作品向上が自然発生します。
一定期間ですが、ランクアップします。
鉄道写真が良い例です。

でも、それも良いことばかりではなさそうです。
比較対象を得た後発作品が、新たな血流の作品に近づくのに、多くの時間が費やされると、

対象が必要な評価の表れも遅れる可能性大となります。

世の中に認められたり、賞をいただけるのは、ひょっとして50年後?!
それも運がよければ?!

写真界にも、世の流れの影響もなく写真を見る目の確かな優秀な評論家や指導的役割の人は、

必ずいると思います。
しかし、察するに、多くの関係者の意見を尊重してまとめる民主主義の方向性が強い場合は、

これからも従来方向から離れられない無難、安定の保守的方向が続いていきそうな気配を感じます。
抵抗も少なく、安易だからです。

この世の中、本気で物事に取り組んでいる人は、何人いるでしょうか。
本気で挑み、本物を発表している人を見極められる人は、何人いるでしょうか。
比較の法則は長生きしそうです。


当日放映したスライド4点を披露します。
いずれも40~50年前、フジフォトサロンにデビュー前後の作品です。

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D51、無心の煙り

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C55、スポーク動輪の先

20160602224631a3d
SLは冷えた鉄塊ではない釜は灼熱の炎

20160602224632842
SL全廃の日の早暁

 

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