「主治医は最後までの責任を負うそして看取ること」
私が30歳のころ勉強していた国立国際医療センター(現国立国際医療研究センター病院/NCGM)放射線科(診断部)は前日に各科から依頼されている胃透視検査を、辺りがまだ暗いうちの毎朝6時前から9時の外来開始までに全員の検査を終了しなければならない苛酷な仕事から始まりました。
いつもにこにこ手伝ってくれた(放射線)技師のS君と昨年、30年ぶりに逢って旧交を温めた。彼はその間いくつもの病院を経て、現在のNCGM放射線技師長に出世して戻って活躍し、つい先月定年で、NCGM放射線科技師長の役目を終えた。
人懐こい笑顔は変わらずで、お酒を多少嗜む彼は冗舌に医療の現状を語ってくれた。おそらく語り尽くせないほどの患者さんとの出会いと修羅場を潜ってきたのだろう
私は、毎日内科やスポーツ外傷の選手を主に、一般のたくさんの方々の総合医療の外来を担当している。
風邪や発熱・腹痛・腰痛など些細な症状でも患者さんにとっては、その日一日重大事。少しでも早く回復してもらおうと一生懸命治療する。そんな中で発見されたがん患者さんには細心の注意を払うのは当然のことです。混んだ外来でもなるべく時間を作りこの一言、この治療法の決定が患者さんの命とその後の人生に大きく関わるからです。
(私自身)医師としての残りの時間を癌治療と高齢者介護の医療に掛けようと思っています。
私立(プライベート)の医療機関ですからどこまで出来るかわかりませんが、今まで多くの患者さんに支えられた(私の医師としての)人生ですから、恩返しとどうしても多くの患者さんが直面する癌治療に助けたい一心で挑戦しようと思っています。
癌治療は、周知のごとく手術療法・化学療法・放射線療法・免疫療法など進化著しい近年だが、最も迅速にしかも安全に多くの患者さんを助ける放射線治療に余生を賭けたいと決めました。
ここで大切なことはもちろん最新鋭の機器を揃える(導入する)のはもちろんだが、多くの医師や技師さん看護師さん栄養士さんらとチームを組んでそれぞれ異なる(進行)状態の患者さんの状況(状態)や小さな要望にも応える体制作りが重要です。体や心のケア、家族のケアなどやるべきことは山ほどあるのが医療の本質です。」
家族や友人は、どんな治療を選択するか希望するか?互いの意志を確認するのもいいでしょう。みんなで医師から説明を聞く、実際にどんな治療かをDVDだけでなく、実際の現場を見ること、こんな「見せる医療」を私たちは目指しています。治療の現場こそ 次に訪れる患者さんへの支援になります。
しかし、忘れてならないことは患者さんを最期(最後)まで面倒を診る決心です。
とくに終末期の患者さんは1日1日が大切です。自院で対応出来ないなら、(一生懸命)入院先を探したりあるいは自宅まで往診したり、小さな悩みや訴えにも真摯に応え、その誠意と態度こそご本人の痛みを癒し、家族の苦労を知り、明日への生きる活力となります。いつ終わるかも判らないこともあるでしょう。しかしそれが人の尊い命であり、力いっぱい生きている方への礼儀です。
残念ながら私たちは死に方も死ぬ時期も自分では決められません。生き方のみ人間(私たち)は決められます。患者さんが少しでも満足できる(悔いなき)最後の瞬間を迎えられるように、私たちは戦うべきです。
お互い医療に携わるS君が、何気に私に語ってくれた「最後まで面倒をみる医者になって欲しい」という言葉はとても重いものでした。
S君いつか君と一緒に働きたい、貴方の素晴らしい経験と知見を活かして一人でも多くの癌患者さんを救おう。
命ある限り、存分に働こうよ!