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木嶋のりこ誕生日記念短編小説 「冷たい風」



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木嶋のりこ誕生日記念短編小説

「冷たい風」




2011年、僕は今、秋葉原にいる。

3月の風はまだまだ冷たい。

実は就活中で、ハローワークに通っている。

家とハローワーク以外は帰って寝るだけの単純な毎日だった。

そんな時、

たまたま友達から貰ったグラビア誌。

「要らないよ」

「まーいいから。あって損はないっしょ」

雑誌の名はクリーム。

女子高生専用グラビア誌だ。

その中で笑顔で僕を見つめてたのが

そう、木嶋のりこ。通称のりちゃん。

僕は今、のりちゃんのグラビアDVDイベントに来ている。

彼女は笑顔でサインと握手をしてくれる。

「僕、このクリームという雑誌で、のりちゃんを知ったんです。この雑誌にもサイン貰えませんか?」

係の人が止めに入ろうとした瞬間、

「いいですよー!いつもありがとうございます!」

「ありがとう!でも今、実は就活中で。元気を下さい!」

「はいっ!」

のりちゃんの魅力は、この仕事を仕事としてやってない事。そして誰にでも元気をくれる事。

だからファンになる。だから好きになる。

DVD「ワルノリ」に貰ったサインも嬉しいが、この雑誌クリームに貰ったサイン


エーちゃん!

今日はイベントに来てくれてありがとう!

エーちゃんは強い人!

絶対に勝つから諦めないで!!

頑張ってね!!!

2011 3  木嶋のりこ


一生の宝物だ。

僕は木嶋のりこというアイドルに支えられて行きている。

大好きだ。


時は流れ、2012年。就活も何とか頑張って今は働いている。のりちゃんの活躍は今でも気にしているが、イベントに行けるのは2ヶ月に一回くらいになってきた。パイクプランニングはイベントが多いから全部は難しい。というか、実は今、物凄い危機に立たされている。会社が危ないらしい。僕はこのままこの会社に居られるのか。


2013年。会社が倒産した。倒産する数ヶ月前から給料が止まっている。ヲタ活どころではない。食っていく事がギリギリ。また就活生活に逆戻りだが、初めての事じゃない、大丈夫だ。


2014年。世間はそんなに甘くなかった。面接する事50社。まだ頑張れる!という気持ちが砂時計のように徐々に減っていく。そんな生活に嫌気が指し、酒に溺れる。借金地獄に堕ちる。持ってる物は全て売った。ベッド、ふとん、テレビ、冷蔵庫、DVD、雑誌、茶碗、箸生きていくのがやっと。もう、何も残っていない。


僕の何が悪いの?

僕が何をしたの?


2017年。そのまま、時は流れ、

ホームレス歴3年。

仕事を探していた時が懐かしい。

歩く気力すらない。

服もボロボロ。

風呂にも入ってない。

ホームレス仲間からも

「ダンボールくらい集めて来い!」


生きていく意味。

息をする理由。

秋葉原のネオンが楽しかった頃。

イベント帰りにみんなで飲みにいって

チェキを見せあってた頃。


懐かしい。


楽しかったな。


もう


駄目たな、僕。


生きてる意味は?


たぶん、誰も困らない。


死のうかな


疲れたよ、本当に。


疲れた


商店街を歩く。


足はビルの屋上に向かう。

飛び降りる事が今の答え。

手に持ってるお金は50円のみ。


全てが無になる事に戸惑いがなかった。


頑張って頑張って頑張って来たけど


失う毎日。


社会がわるい!とか思った事ないよ。


頑張って来たよ。


でも、もう、何もないんだ。


でも、飛び降りって痛いかな。

……痛くてもいいや、別に。

もう、何もかも嫌だよ。

嫌だよ、辛いよ。。。


屋上を目指すビルの入口の横で

ゴミ箱から拾ってきた雑誌を売ってるおじさん。


手に持ってる50円。

今から死ぬのに何の意味もないな。


「おじさん、このお金あげるよ」

「おいおい、俺を乞食と一緒にするな。じゃあ、この雑誌をやる!これで買った事にしろ!」


おじさんがくれた雑誌は、

なんと、クリームだった。

なんて奇跡。何万とある雑誌の中から

まさかのクリーム。


「ふふ、棺桶に持ってけって事かな」


ビルの中に入り、ひとつひとつ階段を上がる。


生きてる事になんの未練もない。

屋上に着く。

クリームの表紙を見ながら


「クリームかぁ、懐かしい。僕が死んだら、のりちゃんは悲しむかな……いや、覚えてないか、はは」


屋上ってこんなに風が冷たかったんだ。

そんな事。考えた事なかった。

短い人生だったな。

もう辛い思いをしなくて済む。

さようなら、みんな。

さようなら、のりちゃん。



その時、吹いてきた風が持っていたクリームのページをめくる。


パラパラパラパラ


そこには、マジックで書かれた文字があった。



エーちゃん!

今日はイベントに来てくれてありがとう!

エーちゃんは強い人!

絶対に勝つから諦めないで!!

頑張ってね!!!

2011 2  木嶋のりこ



呆然とするエーちゃん。


………え?、、、え、、、え?」


涙が止まらない。

涙が止まらない。

この雑誌は、3年かけて

僕のところに戻って来たっていうのか?

そんな奇跡、あるのか?


のりちゃん

のりちゃん

のりちゃん!!!

会いたいよぉ!!!

のりちゃんに会いたい!!!


雑誌は涙でビチョビチョになっている。


のりちゃん、会いたいよぉ!!!





2017年。322日。


僕は死ぬのをやめた。


だって、のりちゃんが


諦めないでって、言うから。


だから、死ぬのをやめた。


何もかも失っているのに

エーちゃんの顔には

ほんの少しだけ希望が戻った。



おしまい





木嶋のりこの優しさは

いつ、どこで、誰を救ってるかわからない。

29歳、誕生日おめでとう。


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梶野竜太郎|かじのりゅうたろう(映画監督・タレントプロデューサー)プロフィール

梶野竜太郎(かじのりゅうたろう)
身長:176cm
生年月日:1964年4月23日
血液型:A型
出身地:東京都

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