某有名ブラック企業に就職して新人研修合宿に行った話５
さて、そんな新人研修も終わり、
とうとう出向先の会社へ配属の日となりました。
薫（とうとう今日が初仕事だ。緊張するなぁ……）
ボクらが研修を受けていたビルは
親会社の大阪支店になり、大阪の梅田にありました。
そして、配属される子会社は
株式会社〇〇ソリューション（仮）という
名前もまったく違う会社で、難波に事務所があります。
薫（難波は自宅からちょっと遠いから、
新人研修のときより早めに行って、遅刻しないようにしないとな）
電車に揺られること一時間で、
だいたいオフィスに着きます。
指定されたビルの、7Ｆが事務所です。
扉を開けます。
薫「おはようございまーす！」
オフィスの中には
スーツ姿の社員が数人いましたが、
まだ出勤している人数はそう多くありませんでした。
社員「新人？ おはよう」
近くにいた太ったスーツの男性が声をかけて来ました。
薫「あ、はい」
社員「まだ稼働時間まで結構あるから、
その辺のデスクに座ってていいよ」
薫「あ、わかりました（早すぎたか……）」
適当なデスクを選び、座ります。
辺りを見回してみると、なかなか広いフロアーです。
オフィスいっぱいにデスクＰＣが並べられ、
ざっと100台はあろうかというところでしょうか。
薫（みんな出勤してきたら、このフロアーが
人でいっぱいになるのかあ……）
だんだんと人が増えてきました。
みんな挨拶を交わしながら、自分の席に座っていきます。
その中に一緒に新人研修を受けたメンバーも
見受けられるようになってきました。
西野「あ、大島さん、おはようございます」
薫「おはようございます」
この西野さんを皮切りに、
大宮くん、藤田くんも出勤してきました。
槻本「ふぁ～あ、眠……おはようございまーす」
薫（槻本さんはやっぱり一番最後か……）
と、そこまで来て、
先ほど朝ボクと話をした
あの太った社員の一人が寄ってきました。
社員「君たち、今日からの新人だよね？」
大宮「はい」
竹中「俺、竹中ってんだけど、まあ、最初で
色々わかんないこともあるだろうし、
なんかあったら遠慮なく聞いていいから」
薫「ありがとうございます（いい人だな……）」
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴りました。
それと同時に、一番奥のデスクに座っていた
白髪でメガネの男性が立ち上がります。
大井マネージャー（以下大井ＭＧ）「よーし、始めっかー！」
社員一同「オッス！」
薫（オッス？）
竹中「とりあえず合わせてればいいから」←小声
薫「は、はい……」←小声
大井マネージャー（以下大井ＭＧ）「〇月×日、朝礼を始めます！」
社員一同「オッス！」
薫「オ、オッス……」
大井ＭＧ「ん？ おお、そうか、今日は新人がいるのか」
大井ＭＧがボクらに気付きました。
大井ＭＧ「じゃあ、この朝礼ってのは毎朝あるから、
最初はそこで見といて、明日以降合わせていくように」
新人一同「はい」
大井ＭＧ「あ、それと、うちの会社は、社員が返事するときは
『はい』じゃなくてオッス！だから」
薫（？？？？？？）
大井ＭＧ「そんじゃ、今日は昨日３台売り上げた竹中！」
竹中「オッス！」
竹中さんが、みんなの前に立ちます。
竹中「えー！ 昨日はー、ずっと営業をかけていた
町工場で、やっと社長と話ができー」
なるほど。どうやら昨日売り上げた社員が
みんなの前で、その日の成果や、
今日の抱負を言う時間のようです。
ならば、しっかり聞かなければいけません。
ボクは姿勢を正し、前で手を組みました。
たしか、バーテンダー時代、
左手の親指を覆い隠すように
右手で包み込むのがマナーと……
大井ＭＧ「おいおい、キミキミ、何してんだ」
薫「え？」
大井ＭＧ「話を聞くときは、こうだよ、こう」
え？
ふん反り返れというのですか？
よく見ると、社員全員が
腰に手をあて、胸を張るようにして、
上司の話も、竹中さんの話も聞いています。
竹中「……ですので、今月末には
30台売って、ＳＶに昇格したいと思います！」
大井ＭＧ「おう、竹中、『昇格したいと思います』じゃねぇだろ？
『昇格します』だろ？」
竹中「昇格します！！」
いま、目の前で繰り広げられているコレはなんですか？
大井ＭＧ「おし！ じゃあ、社訓！ 竹中気合入れて読めよ！」
竹中「オッス！」
竹中さんどーしたんスか
社員全員が竹中さんを筆頭に、前に集まります。
竹中「社訓！ 我々は結果のみを評価します！」←大声
社員一同「我々は結果のみを評価します！」←超大声
これ近所迷惑になんないんスか
竹中「我々は常に全力で結果を出します！」
社員一同「我々は常に全力で結果を出します！」
大井ＭＧ「おう、待て待てお前ら」
薫（ふう……さすがに注意するか……
いくらなんでもうるさいもんな）
大井ＭＧ「声が小さい」←
社員一同「オッス！」
オッスじゃねーよ！！
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