某有名ブラック企業に就職して新人研修合宿に行った話18
→某有名ブラック企業に就職して新人研修合宿に行った話17
間もなく地点は残り
10kmほどとなってきていました。
日は傾き、辺りが赤く染まっていきます。
ボク(まずいなぁ……
早く合宿所まで辿りつかないと)
ボク「さ、さあ、休憩はそろそろいいでしょ!
みんな行きますよ!」
社長「へいへい、まったく若者はがんばるねぇ~」
そんな社長の嫌味も
そろそろ無視できるようになってきていました。
ボク(……あ、あれは)
ボク「みんな! 見てください! 合宿所ですよ‼」
社長「ふぅ~……やっとか」
メガネ「長かったっすねー……」ハァハァ
元ヤン「……」フゥフゥ
ボク「さぁ、あとひと踏ん張りですよ!」
たしか合宿所に着いたら、
研修室に向かえと言われていました。
~研修室~
ボク「大島班ただいま戻りました!」
教官「おう」
軍曹です。
教官「まずは全員席に座れ」
ボク「はい!」
各々が軍曹の前に設置された
パイプ椅子に座ります。
社長「……」ハァハァ
メガネ「……」ハァハァ
元ヤン「……」ハァハァ
ボク(さすがにもうみんな疲労困憊だ……)
ボク(でも、なんとかここまで辿り着いた……
1位ではないだろうけど、順位は悪くないはずだ)
ボク(きっと教官も努力は認めてくれるはず)
教官「よし、ここまで辿り着いたということで
まずはお前ら、お疲れさま」
全員「……」ハァハァ
教官「君たちの順位は4位だった」
ボク(よし、10班以上いるなかで
4位なら思ったより悪くない)
教官「ここに来るまで本当に
色々大変な想いをしたと思う」
ボク(ああ、そうやって労てもらえると嬉しいなぁ……)
教官「……だが、」
全員「……?」
教官「1位になれない奴らはクズだ」
ボク(え……)
教官「最初に言ったはずだ。
我が社はナンバーワンを常に目指す、と」
全員「……」
教官「これが会社の成績だったらどうなる。
『がんばりました』『努力しました』
で利益が出るのか? ああん?!」
教官「会社の利益にならない人間が
いくら綺麗ごとを並べようと、お前らの給料を
支えているのは、もっと上にいる社員だ!」
全員「……」
教官「以上だ。この後入浴と食事を終えたら
夜の研修がある。それまで自室で待機しておくように」
そんな教官の言葉を聞きながら、
ボクらは研修室をあとにしました。
全員「……」
廊下を歩く間、
ボクは一言も発せずにいました。
メガネ「あ、あ、教官のああいう感じも
ふ、2日目になると、さすがに慣れてきましたね」
気まずい空気を察してか
珍しく場を取り繕おうとしたメガネもフォローも
あまり耳には入ってきませんでした。
ボク(……ボクら、がんばったよな……)
ボク(メガネや元ヤンは若いとはいえ、決してあの距離は
楽なものではなかったし、社長だって文句を言いながらも、
ちゃんとここまでたどり着いた……)
ボク(努力なんてまったく無意味だっていうのか……?)
メガネ「あ、大島さん……」
ボク「……」トボトボ
ボクはメガネがかける声を無視して
先に自室に向かっていました。
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