そこにいた話
こんばんは……大島薫です……。
突然ですが、皆さんは
何階に住まれていらっしゃいますか？
例えば、高層マンションの
10階以上上の階とか、
はたまた
一戸建ての二階とか……。
まだボクが22歳ごろのこと。
とある団地の1階に住んでいました。
一人暮らしの若者で
団地住まいなんて珍しいですよね。
両親がブラジルに帰って
日本にボク１人になったため
家族で住んでいた部屋をそのまま引き継いだんです。
その当時ボクには彼女がいました。
彼女とはボクの部屋で
半同棲のような生活を送っていました。
慣れない１人暮らしを
よくサポートしてもらっていました。
そんな彼女が
ある日こんなことを言ったのです。
彼女「ねぇ、最近、洗濯物に出した
下着の数が合わない気がするんだけど……」
ボク「えー？
向こう（彼女の家）に置いてきたの
忘れてるだけじゃないの？」
彼女「そうなのかなぁ……」
不安そうに呟く彼女。
ボク「そんなに心配なら
角ハンガーの周りだけ
下着が見えないように
タオルとかで囲めば？」
彼女「う……うん……。そうする」
ひとまずそんなところで
落ち着いた彼女に
ボクもさほど心配はしていなかったのですが、
さらに数日経ったある日の朝のことです。
彼女「ね、ねえ……！ 見て！！
やっぱり下着なくなってるよ！！！！」
ベランダから呼ぶ彼女の声に
駆け付けると、角ハンガーに干した
洗濯物に不自然な隙間がありました。
彼女「ほ、ほら、だって……」
ボク「……」
彼女が言わんとしていることは
ボクにもわかりました。
彼女がお気に入りだった
レースの入った下着が見当たらなかったのです。
もちろん下着の種類を把握しているわけではありませんが、
その下着は買ったばかりのころ、本人が
よく自慢していたので覚えていました。
確実に盗まれている。
ボク「とりあえず、用心しよう。
下着を隠して干していたのに盗まれるってことは
明らかにうちを狙って盗ってるわけだから――」
そこまで言いかけて、
ボクはしまったと思い、彼女を見ました。
彼女「……」
彼女は青ざめて
恐怖からか微かに震えています。
ボク「だ、大丈夫だよ。
夜盗られてるんなら、ボクも家にいるし、
今度来たらとっ捕まえてやろう」
彼女「……」
わざと明るく言ったのですが、
彼女はまだ黙りこんでいました。
さらに数日後、
また下着が盗まれました。
彼女「もうどうしたらいいの……！」
彼女は崩れ落ちて
泣いています。
ボク「警察に言おう」
そう、彼女と相談し
次の休みの日に２人で
警察に届け出ようということになりました。
2、3日経ち、いよいよ
明日は警察にという日の晩です。
当時住んでいた部屋は
家族がいたころの荷物が大量にあり、
一部屋を物置にしてボクらはいつも
リビングに布団を敷いて寝ていました。
間取りにすると、こんな感じです。
そのとき時刻は深夜3時ごろ。
ボクと彼女は偶然
同時に目を覚ましました。
2人して
「なんでこんな時間に目覚めたんだろう」と
首を傾げたのですが、ボクは
ボク「そうだ。ちょうどいいからさ、
いま洗濯物確認してみない？」
その日は2人とも寝るのが遅く
１時くらいに床についたので
２時間程度しか経過していないことになります。
もしこの時間になければ
犯人は１時～３時にいつも下着を盗んでいるわけですし、
もしまだ盗られてなければ３時～朝方にかけて
犯行を行っていることになります。
こういった細かい時間がわかれば
警察に届けるのにも便利だろうと
思ったのです。
彼女「ええ……なんだか恐いよ……」
ボク「大丈夫だって！ ボクが
見てきてあげるからさ」
そういって、ボクは
布団から起き上がり、
ベランダへと続く窓に近づきました。
ボク「……よし」
バン
と、窓を開けると、
物干しざおにかかった
角ハンガーが見えます。
周りのタオルをずらし、
中に干してある物を見ると
不自然な隙間。
ボク「あっ！ な、なあ、やっぱり
盗られてるよ！ 犯人は
いつもこのくらいの時間に盗んでたんだ！！」
彼女「……」
振り返ると、彼女はそれには返さず、
何か一点を見つめています。
ボク「？」
彼女の視線を辿ると、見ているのは
ボクがいままさに手をかけている窓のサッシでした。
ボク「……ん？」
サッシの横のガラスになにか
汚れのようなものが付いています。
外側に付いているようです。
少し白く濁ったように見えるそれを
指で擦り落そうと触ると、
すんなり消えました。
擦った自分の手を見てみると
生温かい水滴がたくさん
手に付いていました。
何か見覚えのある
その光景。
ボク「……これ……」
そのとき、ボクは
全身総毛立つのを感じました。
ボク「これ……人の息がかかった跡だ……」
そう、そいつは
ついさっきまで
そこにいたのです。
結局、当時の彼女と別れたいまも
犯人は捕まっていません。
おわり。
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あ、危ない。もしも一人暮らし、大島さんか彼女さんのどちらかだけだったら？
その時寝ていてよかった
外干しあり得ない…怖すぎ
性犯罪者は事のでかさに関係なく指全部無くなってしまえとか思いますけど、何故何度も盗まれるのに頑なに外に干したのか？
犯人を捕まえる為かも知れませんが、何度も盗まれる恐怖を彼女さんに体験させるくらいなら部屋干しにすれば良いのに…と思いました。
まぁ…部屋に干して無くなったらもう…ですけれど…ヾ(･ω･`;)ﾉ
…こわっΣ(ﾟдﾟlll)
警察には行かれたんですね？その後は止みましたか？
私もかなり若い頃に何度かやられた事があり、今は部屋干しオンリーです。低層階にも住まなくなりました。
その犯人が痛い目に合いますように☆ミ
結果として直接ケガ等の被害が当時の彼女さんも含め無く過ごせたこと、その点は良かったです。
その勇気ある行動は、小心者の僕にはできませんネ。
これは当然と言われると思われますが、その男気ある行動が、仕事へ取り組む誇りに繋がっているかもしれませんネ。