五月三十日…沖田総司命日
天才剣士、若くして労咳(肺結核)に斃れる。というのはあまりに有名です。
この年にはたくさんの隊士が亡くなっていますが、局長近藤勇も同じ年の4月25日に。
先日ご紹介した、市谷にあった道場「試衛館」の内弟子となったのは沖田が九歳の時。若い…というか幼いですね。入門という点では土方歳三より先輩です。
この頃からずっと近藤を慕ってきた沖田は、病に伏して隊とともに行動することができなくなってからもずっと近藤や新選組を案じていたことでしょう。
近藤の処刑から二か月後(この年は四月と五月の間に閏四月があったため)、近藤の死を知らされぬまま息を引き取ったと言われています。
享年27(生年が明確でないため24、25とも)。
若い…早すぎるよ沖田さん…
ということで、沖田さんが最期を迎えた地とお墓を訪れてまいりました。
実は沖田総司の終焉の地とされる場所が二つあり、今もどちらが本当かわかっていません。
一つは、千駄ヶ谷の植木屋平五郎の屋敷で療養し、そこで亡くなった説。
当時はこの辺りを渋谷川が流れており、そこにかかる今尻橋のかたわらにお屋敷があったとか。
今はもうその川はなく、暗渠となって地下に沈んでいるようですが、橋の跡らしきものが道の両脇に見られました。
実は、この説明板、つい二年前にできたもので、それまでは沖田総司終焉の地を示すものは何もなく…
私自身こんなものが出来ていたとは知らなかったので、うっかり見落としてしまうところでした。見つけられてよかった!
もう一つが、浅草の今戸神社。
この境内に松本良順の私邸があり、そこで亡くなったとする説です。
松本良順は奥医師であったほか、新選組の診療も行っていた医師だったので、彼の家で療養していたこともあったとは思いますが、後に千駄ヶ谷に移り亡くなったとする一つ目の説の方が有力だそうです。
私も、初めて読んだ作品で千駄ヶ谷での最期が描かれていたせいか、千駄ヶ谷没説の印象が強いですね…。
どちらにせよ、早すぎる天才剣士の死は、そのドラマ性から多くの作品で様々な脚色が加えられて描かれていますが、昔馴染みの隊士たちが見舞いに訪れる場面でいつも涙腺が崩壊します。
最近は史料ばかり読んでいて創作ものからは離れていましたが、ふと久しぶりに司馬遼太郎氏の書く沖田総司に会いたくなって、7年ぶりに「燃えよ剣」を開いてみたり…
新選組に興味を持ち始めた頃とくらべると格段に知識も思い入れも増したと思うので、更に感情移入しそうな予感です…(笑)
さてさて、最後にお墓参り…といきたいところですが、彼のお墓の一般公開は一年に一度のみとなっています。
過去の新選組ブームで続出した常識ない訪問者にお寺さんがお怒りになり非公開となったとのことですが、年に一度新選組友の会が主催する「総司忌」にのみ、ご好意で公開してくださっているそうです。
ホームページにも、お寺さんの方には絶対に問い合わせないようにとの注意書きがありました。そうでもしないと、翌年以降の総司忌の開催自体が危うくなるとかなんとか。
悲しい…というか、情けない話です。
個人的には、
史跡ももちろん関係者さまが大切に管理してくださっている神聖な場所ですが、特にお墓は、軽い気持ちで詣でたり、わいわい押しかけるような場所ではないと思うのですよね。
前述のような一部のマナーのない方々から守るためにも、親類縁者さま以外には公開しないくらいで丁度いいのかなと思ったりもします。
偉そうに語っていますが、私自身、どんな心構えで偉人たちのお墓の前に立つべきか、史跡にカメラを向けるのか、いつも悩みながらあちこち巡ってブログを書いていたりします。
この期に及んでキャラクターと重ねているつもりはありませんが、かといって、直接関わっていない先祖でもない彼らを、まったく偶像化していないとも言えません。
きっとそんなに難しく考えず、尊敬と感謝の念を持って手を合わせればいいのかな、とも思いますが…
だからこそ、公開していただけているお墓に関しては、自由に手を合わせることができる環境にあることに感謝して、謹んで詣でたいですね。
長々と話が逸れてしまいましたが、本題に戻ります。
私が訪れた日も、お墓はもちろん非公開だったのですが、お寺の様子だけでも見たいなと足を運びました。
麻布にある専称寺です。
お墓はもちろん本堂を覗くつもりも中に入るつもりもなかったのですが…ふらっとお寺の脇に回ったら、塀越しに墓地が見えまして、沖田総司のものらしきお墓も確認できました。彼のお墓には屋根が備え付けてあるのですよね。遠目に見た感じ屋根のあるお墓はひとつだけだったので、「ああ、あれが沖田さんのお墓なのかな」と、距離はだいぶありましたがその場でこっそり手を合わせてまいりました。
お墓たちが見上げる六本木のビルたち…。
余談ですが、このお寺の脇にも、千駄ヶ谷の終焉の地付近にも、どくだみの花が咲いているのが目に付きました。
彼も、この場所でこの花たちを見ていただろうか…
なんて想いも馳せてみたり。