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大村あつし

1996年8月にエーアイ出版より『Excel95で作る VBAアプリケーション~ VBAで作る販売管理システム~』でITライターとしてデビューしたが、2007年6月にゴマブックスより出版された『エブリ リトル シング~人生を変える6つの物語~』で小説家に転身。まだ、IT書籍の執筆は一部、続けているが、現在の活動は小説が中心となっている。

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無限ループ 大村あつし 右へいけばいくほど0になる

物語の紹介

深夜の歌舞伎町。平凡な会社員の誠二は謎の女子高生から物(ブツ)を買う。
それは、手を置くだけで怒りの度合いに応じて獲物の財産を奪える恐るべき箱だった。
夜の銀座で金持ちを物色する彼は、しだいに狂乱の世界と運命の女(ひと)に翻弄されていく。
誠二が見た「無限ループ」とは?人間の欲と愛を描いた傑作ミステリー。

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Prologue 黄金の光

スザーナは思った。これは夢に違いないと――。

浅黒くやせ細った自分の体が、まばゆい光に柔らかく溶けていく。それが、毎朝、壁の隙間から差し込む陰湿な朝日ではないことは、その照度から理解した。それに、時計よりも正確な体内時計が「まだ朝じゃない」と告げている。

やはり、これは夢に違いない――。

だが、スザーナの意識はしだいに困惑の度を深める。穏やかな熱が胃袋から滑るように全身に広がり、やがては手先、足先にまでぬくもりを与えていく。いまだかつて知らない安穏な体験だ。

<感覚を伴う夢なんてあるの?>

湧きいずる疑問や好奇心に屈し、スザーナは薄目を開けて目の前に両手をかざしてみた。と、次の瞬間、彼女の南アジア人特有の黒目がちの瞳は信じられない光景を捉えていた。洗濯や農作業で苛めぬかれた彼女の指先が、生まれたての赤ん坊の肌のようにすべすべとしていたのだ。しもやけなど一切認められない。

スザーナは、驚きのあまり瞼を大きく開き、力みのためについ上半身を固くした。一瞬、しまった、と思った。不用意に力を込めると体の節々が悲鳴を上げるからだ。ところが、彼女の関節は、悲鳴どころか溜息さえ漏らさなかった。指先の傷口だけではない。慢性化していた肩や肘、手首の痛みまでもが消えていた。

<一体、なにが起きてるの?>

スザーナは現実を理解しようと努めるが、それが上手にできないのは彼女が寝ぼけていたためではない。彼女の脳はしっかりと覚醒し、活発に機能していた。ただ、想像を超えてしまった現象を受け入れるのは、スザーナでなくとも困難であろう。

そこで彼女は、謎はそのままに、とりあえず今できる作業に移った。光の正体を確かめるべく光源に目を向けると、今度はなんと、“想像を超えた現象”をも超越した“神秘”に直面した。

スザーナの瞳が映したのは、雨露も満足に凌げない貧相な小屋の床を沈めんばかりの金貨の山であった。生まれてこのかた、一枚の銅貨すら手にしたことのないスザーナにとって、それは巨大なUFOにも匹敵する壮観だった。そして、UFOが発する光は、肩寄せ合って眠る両親と弟をも包み込み、狭い部屋中を黄金で満たしていた。

スザーナは、山に近付くとそっと金貨を一枚、手に取ってみた。畏怖の念を抱かせる触感、そして重さに、体中の血液が心臓に集まる。スザーナは、「静まれ」と囁(ささや)きながら、右手で左胸を撫で始めた。一さすりするたびに波が穏やかになり、ついには気持ちが凪(なぎ)になった。そのときである。スザーナの脈動が正常値に戻るのを待っていたかのように、後方で歓喜の声が聞こえた。いつの間にか目を覚ましていた両親だった。

「ああ、神様! なんという御心を! これで、私たち一家も人間らしい暮らしができます!」

両親の感謝に接しながら、スザーナも金貨に頬ずりをすると言葉を発した。

「そう。これは神からの贈り物。神様、ありがとう。これで、私……、行けるわ!」

 

同時刻、その地域では、あちらこちらの小屋で同じ現象が起きていた。金貨の山を見た人々が、感涙に咽びながら手を合わせる。もはや、両手が触れても痛みはない。傷が失せた指先と星のような瞳を天に向けるその儀式は、神への喜びと、罪もないのに理不尽極まりない不遇な環境に鎖でつながれてきた、その長年の酷遇への決別の雄叫びでもあった。

希望を運んできた光は、彼らの前途を明るく照らしていた。

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