気をつけたいドライエイジングビーフの提供方法
根強いブームが続くドライエイジングビーフ。
扱う際に気をつけておきたい注意点、提供方法などについて記事にしました。
こんにちは
〜人とお肉をつなげるサイト〜Meat UP!主宰の片平梨絵です。
人気のドライエイジングビーフ。
最近ではあらゆる業態でドライエイジングに取り組むようになってきました。
でも私自身は、この流れに違和感を感じることもあります。
食品安全の観点から見ると、やはりドライエイジングは逆行する動きともいえるからです。
O‐157やBSEの国内発生以降、食肉業界ではHACCPやSQFなどの食品安全マネジメントの考え方が広がりました。
BSE発生によって十数年、お肉の売り場や現場では、美味しい食肉を提案することよりも
「個体識別番号の徹底や表示問題・・など。とにかく間違いがないように!」
そんなことばかりが最優先課題になっていましたから、その反動なのかもしれません。
いまのブームは美味しさに回帰したということでしょう。
それは素晴らしいことだと思うんです。
ただ、技術・ノウハウの蓄積のない企業が安易に取り組むにはリスクがあります。
じつは熟成のプロセスについて科学的に解明されていないことが多く、7〜8割は未解明。
学会などの論文でも新しい知見はほぼありません。
熟成方法は品種や個体差によっても異なり、各企業の経験則によるところが大きいのです。
ひとくちにドライエイジングといっても、どんな肉が好きで、どんな肉に仕上げるか、嗜好によりその熟成方法はさまざま。
どれが正解ということも科学的な定義もありません。
でも、通常の精肉に比べ菌数が多いものを扱っているという意識をもつ必要があります。
ドライエイジングの過程で発生する菌やカビ。
(もちろん無毒のカビもあります)
表面をはずした中側の赤身部分の菌数はとても低く、熟成後は適切に表面を除去することで問題なく供給できることが実証されていますが、表面のカビが最終製品に付着すれば、汚染します。
熟成後にドライエイジングビーフの商品化やお店で提供する際には、細菌汚染を最小限に抑えるために万全を期す必要があります。
ナイフの消毒、まな板は一時処理、二次処理、最終トリミングなど各段階に分けて別のものを使用するなどの配慮が求められるでしょう。
5年前に牛肉の生食提供は原則、禁止されました。
しかし、最近は店独自の判断で加熱条件が十分とはいえない料理を提供するメニューが散見される印象を受けます。
それがドライエジングビーフであれば、なおさら食中毒のリスクが高まり、細心の注意を払わなければなりません。
十分な加熱なしに提供すれば、生存していた細菌により体調を崩すことも想定されます。
免疫力が低下している人、子ども、高齢の方が摂取する際にはとくに発症しやすくなり、注意が必要です。
何か事故が起きてしまえば拡大したマーケットは消失してしまいます。
需要が縮小することによる経済的損失はもちろんですが、食肉を囲む楽しい1シーンまで消えてしまうのは悲しいことです。
適切な管理の徹底と啓蒙により、エイジングビーフを安全に美味しく味わいたいものですね。
全国農業新聞・食肉ウォッチ10月7日付で関連記事を出稿しています。
http://meat-up.jp/片平梨絵の食肉ウォッチ⑦全国農業新聞/
主宰:片平梨絵
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