何故釣りをするのか。
そこに海があるからだ。
5時10分、まだ真っ暗な晩秋の港。
AM2時30分に起床し、館山道を南下する。
現地に着いて空を見上げると、冬の星座がくっきり見える。
北風が吹き、寒い。
気温5度。
オリオン座に見守られながら、港から出船。
波はなく穏やか。
ファーストポイントに着く頃には辺りは薄明かるくなっていた。
千葉県勝山港沖。
初めて訪れるこの海で、果たして“真鯛60cm”は揚げられるのか…。
前日は3・5キロが揚がったそうだ。
一投目、いきなりゴツン!と当たりがあった。
餌だけ取られたが、今日は何か起こりそうな予感。
サバが最初に掛かったが、出船してから、1時間経過した午前7時。
竿先が海面方向へ“ククッ”と曲がった。
竿を手に取り、リールを巻き上げる。
時々、小気味の良い引きがある。
鯛だな。
手応えは小さいが、海底60mからのやり取りを楽しんだ。
まだ船中鯛を揚げていない人も多く、赤い魚体が浮かび上がると、『鯛だ!鯛!』と歓声が上がった。
可愛い25cmくらいの塩焼きサイズが揚がった。
すぐに投入すれば続いて釣れるという船長のアドバイスもあり、すかさず同じ60mのタナへ。
誘いを掛ける。
竿をスーっと2mくらい上げ、静かに下ろす。
すると次の瞬間“ゴンゴン!”と当たりが。
重い……。
海底60mからの青物との闘いは、棘上筋に乳酸が溜まる。
下へ低くが斜めにも引く。
残り8m、海面近くになってもまだ抵抗をする。
白い魚体が浮かんだ。
イナダだ。
体調40〜50cmcmくらいのブリの幼魚である。
煮付けや刺身が美味い。
これで取り敢えずは一安心。
チラリと横を見る。
一緒に来ていた渡辺さんの竿先に反応がない。
渡辺さんはまだ一匹も釣れていない。
早く釣れてくれと願う。
同行者も釣れてくれないと楽しくない。
完全にお天道様が昇り、海面がキラキラし出した頃、私にまたイナダが掛かり、渡辺さんにも待望の1尾(真鯛)。
その後は陽が出るとぽかぽかして静かな揺れに眠りそうになる。
渡辺さん差し入れのおにぎり3個を海の上で平らげ(何故こんなに美味いのか)、穏やかな時間を過ごして13時沖上がり。
心配された小さめのクーラーボックスにも十分に収まってしまい、帰路に着いた。
竿やリール等の道具を洗い潮を落として次の釣行への準備を済ませ、“魔法のサラダ”のある小料理屋へ魚を持って行き調理して頂いた。
この一連の流れが最高なのである。
疲れたが、疲れが取れた。
次回は大鯛を狙う。
つもりだ…。