新しい年も始まり、通常の生活も始まった。
例年になく早めにしばれがやって来ている。
道内でも大雪、関東でも朝方凍るほど。
地球規模の異常気象の傾向。
寒い所で暖かい所の魚が獲れたりする。
海の中も季節感がおかしくなって来ているのか……。
人間の生活に与える影響はどうなのだろうか。
そんな事を感じつつ、私には姪っ子がいる。
7歳である。
年末年始には毎年会う。
見る度に急激に成長している。
3歳くらいまでは、私の事を見ると号泣していたが、今では私を受け入れてくれている。
今年も会う事になり、クリスマスも終わった頃、連絡があった。
『サンタさん来たか?』
『来たよ。んとね、イオンで欲しいブーツあって、その時は、買わなかったんだけど、サイズも形も色も全く同じのが、窓の外に置いてあったの。なんで欲しいの分かったのかな……。多分普通のおじさんの格好して紛れて見てたんだね。』(実際本当だったらそれは危険人物になるが…)
『そうだな。多分変装していたのかもな。』
『でね、窓の外に置いてあった。入って来れなかったんだねー。』
『煙突が細いから入って来れなかったんじゃないか。それにクリスマスの日はサンタさんめちゃくちゃ忙しいから、世界中のよい子達にプレゼント配るから、空飛んで各家庭を回っているんだよ。その方が仕事が早いからさ。』
『でも、隣の○○ちゃんは玄関に置いてあったんだって。なんで鍵持っていないのに入って来れたのかなーって言ってたよ。』
まずい、それは防犯レベルの話にもなってくる。答えに詰まった。
『多分、クリスマスだけプレゼントを置けるシステムになってんだな。』(苦しい…)
『おじちゃん、なんでトナカイとソリなのに空を飛べるの?トナカイの何が飛べるの?』
子供のあくなき好奇心と疑問は尽きない。
『なんでだろうね…。牛とか馬とかヤギとかでも良かったんだろうけど、サンタさんのトナカイは足の裏にジェットエンジンを………いや、魔法だよ。魔法使ってんだな。』
『ふーん。 おじちゃん、私ねー、サイズは140だよ。』
『へっ?』
『コートは140で中は130かなぁ~。』
『なんでサンタさんから急に服のサイズ言った!?』
今までファタジーな話をしていたが、急にリアルな世界に引き込んで来た。
確かに私は毎年、土産兼クリスマスプレゼントっぽいものとして、洋服をプレゼントしていた。
今年は、もう小学校に上がったからここは一つ、知性と感性を磨いて頂く為に絵本と多分可愛いと思われるスケジュール手帳を既に購入してしまっていた……。
まずい。多分毎年の贈り物が癖になり、インプットされてしまっていたのだろう。
もう、買い足す時間はない。
ここは、断腸の思いで話題を替えた。
『ところで字は読める?書けたりもする?』
『読めるよ!簡単な漢字もね!ひらがなは全部書ける。』
成功だ。
翌日、会って食事やサンタさんの現れた場所の現場検証など終えた頃、プレゼントタイム。
『ありがとう。』
そう言って受け取ると、手帳を手にとり、
『これ、なにするの?』
しまった。小学校1年生にはスケジュール帳は早かったか。
『それは、○○が、これからやりたい事、やるべき事を書くんだよ。先ずは自分の誕生日を書いてごらん。』
自分の誕生日に“おたんじょうび、8さい”と書き込んだ。
数冊の絵本を手にとり、黙り込んで読んでいた。
最近の児童向け絵本は奥が深く、色々迷った。
死んじゃうやつとかは悲しいからダメだ。
ひとまず、洋服からのパターン替えは成功した。
サンタさんは、フィンランドに住んでいる事も教えてやった。
昨年末トラブルもあったようだが、手紙を出すと返事が返って来る事も教えた。郵便番号は“HOHOHO”である事も教えた。これはウケた。
こうして、年に一度の楽しい時間が過ぎて行こうとしていた次の瞬間、姪っ子が唐突に口を開き空気を切り裂いた。
『ねえ、おじちゃんはなんで結婚しないの?』
『!?なぜ、そう思うんだ?』
『だって、結婚しなかったらどんどん年取っちゃうよ。』
『………。その通りだ。間違いねぇ。はい…頑張ります……。』
感性は、既に鋭く磨かれているようである……。