花粉症も軽くなり、関東は桜が咲き始めた。
日本人で良かったと思う季節。
同じ職場の中南米の選手にも、この日本の美しい景色を楽しめと言った。
先日、何気なく入ったこじんまりした魚料理の店。
店にそろり入ると座敷に横になってテレビを観ている主人とカウンターで食器を洗っている奥さん。
私が入って来たのに気付くと、2塁にスライディングしてすかさず起き上がって3塁に走るランナーの如く、素早くカウンターの中へ向かった。
壁のお品書きを見るとやたら高級な魚に高級な値段。
『いい魚ばかりありますね。』
『うちは、はっきり言うけど、全部天然物だから。養殖じゃねーから。』と、早口でご主人が言って来た。
そこから怒涛の語りがプレーボール。
魚や野菜に旬がある話から、豊臣秀吉からアジア地域の話まで、途中しゃべり過ぎて息継ぎを忘れて呼吸困難になっていた。
何故に彼はそこまでの状態になったのか。
海外で何ヵ月ぶりかに日本人に会った時の現象なのか、とにかく相づちすら許さない。
トイレも行きたくなったが、息継ぎ無しなのでタイミングが難しい。
話が途切れるのを待ち、一瞬の隙を突いてトイレに立つ。
ついでにお会計を済ませ店を出ようとしたら、また新しい話が始まり、タイミングが難しくなったが、何とか帰る事が出来た。
ご主人が話している間、奥さんは一言もしゃべらない。
奥さんは1日中、ただ頷いているだけなのだろうか。
私史上最高にしゃべる人に出会った。
料理の味は大変美味しかったのだが、それ以上にご主人のおしゃべりの持久力が印象に残った。
ご主人の口は、すでに“満開”であった…。