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10.幸せとは足ることを知ることである(1)

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 私がある大学を受験したとき。英語の小論文の設問は、「幸せとは何か?」でした。私は、次のように答えました。

 

 Aさんは道で百円を拾いました。すると、そのすぐそばで、今度はBさんが百五十円を拾いました。その様子を見ていたCさんは思いました。

 

「百五十円を拾ったBさんは、百円を拾ったAさんより1.5倍幸せに違いない」

 

 しかし、Bさんはあまり喜んでいるようには見えません。不思議に思ったCさんはBさんに尋ねました。

 

「百五十円拾ったのに嬉しくないんですか?」

 

「全然、嬉しくありません。百五十円ではタバコが買えませんから。今、私はタバコが吸いたくて吸いたくてしかたがないんです」

 

 次に、百円を拾ったAさんに心境を聞いてみました。

 

「私は嬉しいですよ。もう、喉が渇いて乾いて。だけど、この百円でジュースが買えますから」

 

 そのセリフを聞いて、Cさんは悟りました。

 

 「幸せとは満足することなんだ。しかし、満足できるハードルは人それぞれ違う。そのハードルを乗り越えたとき人は幸福感に浸れるんだ。百円のジュースを飲むというハードルを乗り越えたAさんは、満足感を得て喜んでいる。しかし、二百円のタバコを吸うというハードルを掲げたBさんは、百五十円では満足できずに落ち込んでいる。ハードルは高ければいいというものではない。大切なことは、身の丈にあったハードルを設定すること、そして、足ることを知ることなんだ」

 

 ちなみに、私の大学の受験時は、缶ジュースは百円、タバコは二百円でした。

 

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大村あつしプロフィール

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大村あつし

1996年8月にエーアイ出版より『Excel95で作るVBAアプリケーション〜 VBAで作る販売管理システム〜』でITライターとしてデビューしたが、2007年6月にゴマブックスより出版された『エブリ リトル シング〜人生を変える6つの物語〜』で小説家に転身。まだ、IT書籍の執筆は一部、続けているが、現在の活動は小説が中心となっている。

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