ベンチッチ復活祭2、本調子には程遠い(ベンチッチとカサキナを気絶するまで応援するブログ82)
ボクが子どもの頃、広岡達郎という西武の名将がいた。
彼は、巨人との日本シリーズで、初戦は巨人は絶対的なエースの江川卓を投入すると確信し、自チームのエースを温存させて2戦目に回した。
この采配には、マスコミ、ファンのみならず、野球関係者までもが大ブーイング。
「短期決戦の日本シリーズの初戦をみすみす負けるなんて、完全なミスジャッジ」というわけである。
しかし、その年の日本一は西武。
広岡監督の采配は見事に的中した。
広岡監督を思うに、ベリンダ・ベンチッチは本当に策士である。
彼女は、相手にもよるが、無理に1stセットを取りにいかない。
7試合の日本シリーズよりもさらに短期の、3セットマッチなのに、彼女はこともなげにこうした作戦をとる。
理由は明白で、1stセットで彼女がしていることは「情報収集」である。
相手は、どんなショットを得意とし、弱点はなにで、どんなボールを打つとどんなリターンが来るのか、そして、肝心のその日の自分のコンディションはどうか。
1stセットを通じてこのように集めた情報は、彼女のコンピューターの中でパズルを組み合わせるように可視化していく。
そして、このパズルのピースがすべてはまったときのベンチッチなら、たとえ相手がセレナでもムグルサでもケルバーでもハレプでも負けない。
なぜ、ベンチッチがこのような戦法をとるのかは、本人でないのでわからないが、察するに、ベンチッチのポイントを取るパターンは10個や20個ではない。
これは、ウィナーの種類という意味ではなく、たとえば昨日の試合でも見せていたが、最終的にはライジングのアングルショットだが、その前にベースラインぎりぎりに打ちごろのスピンボールを打つ。
相手は、「しめた」とばかりに思い切り叩くが、ベースラインの後ろからなのでウィナーにはならない。
そして、ベンチッチはそのボールをテイクバックもせずに、面だけを合わせて、相手の足元に沈めるように返す。
相手にしてみれば、決めにいったボールが、直後に自分の足元に戻ってきているので、もはや、ベンチッチのコートに返すので精一杯。
そして、ここで初めてベンチッチのウィナーがさく裂する。
この、ウィナーを決めるまでのプロセスの種類が、ベンチッチは数えきれないほど多いので、これほど大ファンのボクでも、ベンチッチが何を考えていて、次に何をしてくるのかがさっぱりわからない。
だからこそ、ベンチッチのテニスは面白い。
もっとも、昨日の試合では、テーピングをしている右腕、さらには、初戦ではしていなかった親指のテーピングも見られ、明らかにベンチッチはその親指を気にかけていたが、それが原因かどうかはともかく、ベンチッチらしくないミスが多かった。
あのテニスでは、純白のウェアに身を包んで、ウィンブルドンの決勝戦を戦うのは無理だろう。
というよりも、ウィンブルドンで優勝を目指すような選手が、そもそも、リコー・オープンには出場しないと思うが。
不思議なのは、ベンチッチは腰の故障で2カ月、戦列を離れていたのに、復帰戦でなぜ右腕や親指にテーピングをしているのか。
一体、どんなリハビリをしたのか?
ベンチッチのテニスにはストーリーがある。
彼女のテニスは、スポーツというよりも芸術である。
しかし、ベンチッチがどのようなテニス人生を歩みたいのか、そのストーリーが見えない。
なにか、目の前のランキングを死守することに夢中になって、片っ端から大会にエントリーしている印象だが、テニス人生を終えたときに残るのは、グランドスラムの優勝回数だけである。
もしこのまま引退すればの話だが、セレナ・ウィリアムズなら21回、マリア・シャラポワなら5回。
ボクも、セレナが通算でいくつの大会で優勝して、何勝したかなんて知らないし、興味もない。
しかし、21回のグランドスラム優勝は死ぬまで忘れないだろう。
ベンチッチのテニススタイルでは、クレーコートで勝つのは容易ではないが、生涯グランドスラムを成し遂げる。
そして、そこから逆算するようにテニスを磨いていって欲しい。
実は、まさしく、いまそれをしているのが、同じ19歳のダリア・カサキナである。
彼女は、ベンチッチとは真逆で、まだ世界ランキング30位台なのに、グランドスラムのシード権は持っているので、無駄な試合には出ない。
今こそ、ベンチッチとそのチームには、カサキナから学んで欲しい。
それができないなら、チームを解散して、一から作り直すべきだと思う。
とはいえ、リコー・オープンに出場している以上、ボクはベンチッチを気絶するまで応援せざるを得ない。
明日から東京に遊びに行ってしまうので、日曜日の夜はベンチッチ三昧のボクである(*^^*)
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