マリア・シャラポワ-ボクの人生を変えてくれた人
マリア・シャラポワに2年間の出場停止処分がくだった。
メルドニウムは、今年から新たに禁止薬物に指定されたもので、予想もしていなかった重い処分である。
ボクは、シャラポワはリオオリンピックに出場できると楽観していただけに、もはやテニスを観る気も失せるほどに落胆している(とは言いつつも、昨日もベリンダ・ベンチッチ VS クリスティーナ・ムラデノビッチ戦を観たが)
2004年2月、ボクは自分で創業した、たった1人で始めた会社の社長の座を退いた。
そのときには、社員数は外部スタッフを入れると30人程度になっていた。
そこまで育てた会社を好き好んで辞める人間はいない。
ボクも、とある事情で退職に追い込まれた。
自殺も考えるほどの失意の中で、ボクは逃げるように東京に居を移した。
すでに、何作か小説を書き上げていたので、それを売り込むためである。
ところが、いざ東京に行っても、何をしていいのかわからない。
「売り込む」と言っても、いきなり出版社を訪ねていくこともできない。
ボクは、自分のあまりの無計画さに、自分自身に腹を立て、絶望し、酒も飲めないのに夜の六本木を闊歩していた。
それしか、精神を支える術がなかった。
そんな暑い夏のある日、ボクはたまたま、NHKにチャンネルを合わせた。
テレビでは、セレナ・ウィリアムズと、聞いたこともないロシアの17歳の少女のウィンブルドンの決勝戦が始まるところであった。
マリア・シャラポワという名のその少女は、陶器のような滑らかな白い肌を純白のテニスウエアで包み、ボクはコートに舞い降りた妖精を見ているかの錯覚に襲われた。
そして、ウィンブルドン優勝という快挙を成し遂げた。
すぐにスタンド席を駆け上がっていって、父親と抱き合うシャラポワ。
そんな愛娘にキスの嵐を浴びせる父親。
その様子を見て、ボクは涙した。
そして、すぐにネットで彼女のことを調べると、両親はベラルーシ人だったが、運悪く、シャラポワが4カ月の胎児のときにチェルノブイリ原発事故が発生し、彼らの居住地は汚染区域となり、両親はこれから生まれてくるシャラポワのために仕事を捨て、ロシアに移り住んだこと。
子ども用のラケットを買えずに、大人用のラケットをのこぎりで切って使っていたこと。
テニスに人生を賭し、わずか7歳のときに父親と2人で、所持金9万円でアメリカに移住したこと。
しかし、年齢制限でテニススクールに入学できずに、10歳までの3年間は、なけなしのお金で雇ったコーチに個人レッスンを受けていたこと。
ネットで読みながら、ボクは再び涙した。
そして、誓った。
「ボクも3年間だけ頑張ってみよう。何をどうしていいのかさっぱりわからないが、英語も喋れずに7歳でアメリカに渡ったシャラポワを思えば、落ち込んでいる場合じゃない」
その3年後の2007年、ボクのデビュー作、『エブリ リトル シング』は20万部のベストセラーになった。
ボクは、あたかもウィンブルドンで優勝したかのような高揚感に包まれた。
マリア・シャラポワ。
ボクの人生を変えてくれた人。
今、彼女の華麗なテニス人生が幕を閉じようとしている。
今は、スポーツ仲裁裁判所が寛大な判決を下してくれることを祈るばかりである。
ただ、たとえどのような結果になろうとも、マリア・シャラポワは死ぬまでボクの女神である。
ボクの人生に多大な影響を与えたという点では、ビートルズと双璧のスーパースターだ。
贅沢は言わない。
シャラポワが幸せでいてくれれば、ボクはそれでいい。
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