ラドワンスカは相手のメンタルを養分にする寄生獣 ツアーファイナルズ(女子テニス211)
” I don’t wanna see the distance between you and the net!”
1stセット終了時、ガルビネ・ムグルサのコーチが吠えた。
そこには、いつもの哲学者を思わせる風貌も、穏やかな語りぐちもなかった。
上述の言葉は、アグネシュツカ・ラドワンスカのロビングやパッシングを恐れてネットに付けずに、コートの中で立ち往生している愛弟子への怒気をはらんだアドバイスだが、いら立っていたのはコーチだけではない。
ボクもいら立った。
当然、一番いら立っていたのはムグルサだろう。
選手も人間である。
してはいけないミスをすればメンタルが落ちる。
そして、落ちたメンタルはコートの水たまりとなる。
ところが、ラドワンスカは彼女にしかない武器を持っている。
彼女の華奢な体からは、その水たまりを吸い上げる透明な管が伸びている。
結果、相手選手のメンタルが落ちれば落ちるほど、ラドワンスカは強くなる。
あたかも、相手のメンタルを養分にする寄生獣のように。
ツアーファイナルズの2回戦。
ラドワンスカの調子は決して良くなかった。
ところが、5-4とserving for the setを握ったムグルサが、まさかのいきなりのダブルフォルトをした。
寄生獣が、この「絶対にしてはいけないミス」を見逃すはずがない。
そこで突然テニススタイルを変えたラドワンスカは、ボクには変幻自在に姿を変えられるモンスターに見えた。
ネットを挟んで戦っているムグルサにもそう見えていたに違いない。
モンスターが怖いからではないだろうが、その後のムグルサはネットプレーを恐れ、自分がなにをしているのかもわからないほどの混乱状態であった。
それを証明していたのが「誤審への対応」である。
ムグルサのベースライン際のボールは線審に「フォルト」とジャッジされたが、ムグルサは「嘘でしょう?」という顔をした。
嘘だと思うのなら、チャレンジをすればいい。
しかし、ムグルサはチャレンジをしなかった。
だからこそ、テレビのCGでそれが「イン」だとわかったときには、ボクは悔しさで歯ぎしりした。
そして、2ndセットも思うようなネットプレーができないまま、ラドワンスカから見て4-3のときのオンラインコーチングで、ムグルサは絞り出すようにコーチに言った。
「あなたに言われたテニスを、私は精一杯やっている」
それが彼女の「遺言」だった。
その後、あっさりと2ゲームを取られての敗戦。
ムグルサは、昨年のツアーファイナルズ準決勝敗退の雪辱を果たすことなくスタジアムから姿を消した。
ラドワンスカに勝つ方法はいくつかある。
10勝0敗と大きく勝ち越しているセレナのようなパワーテニス。
もしくは、ロングラリー。
ラドワンスカは守備型の典型だが、華奢で筋力がないので、ロングラリーに持ち込めれば、ラドワンスカは先に力尽きてラケットのヘッドスピードが落ち、ボールをネットにかける。
そして、なによりも重要なのが「メンタルを落とさないこと」だ。
ラドワンスカの養分は、相手選手の落ちたメンタルなのだからそれも当然だ。
直近のグランドスラム、全米オープン3回戦のアナ・コニュを思い出して欲しい。
彼女は、どれほどミスをしてもメンタルを切らさずに、あの大舞台でラドワンスカに勝ち切った。
アナ・コニュは、まだあまり注目されていないが、ボクは彼女は「来る」と思っている。
あのラドワンスカ戦で、ボクはそう確信した。
「メンタルを落とさなければ、ラドワンスカは恐るるに足らず」と考える技術的な理由もあるが、そんなことを考える必要はない。
2008年というとボクはテニスを観ていなかったが、そんな大昔からTOP10に定着しながら、ラドワンスカがグランドスラムに縁がないのはなぜだろう。
理由は明白だ。
相手選手がメンタルを落とさないからだ。
グランドスラムともなれば、誰もが死に物狂いで戦う。
そう。
ラドワンスカに勝つ一番の秘策は「死に物狂い」である。
ラドワンスカ・ファンには愉快ではないだろうが、「死に物狂い」こそがラドワンスカの攻略法であることが10秒でわかる動画がある。
(つい先日、なぜかこの動画をブログに貼ったばかりだが)
では、シャラポワの復帰を待ちながら、ペトラ・クビトバのあまりに美麗な写真でお別れです。
(ちょっと、あまりに悔しくて、これ以上ブログを書けません。
しばらくお休みします)
『しおんは、ボクにおせっかい』
うずくまって泣きました(読者レビュー)
→ Amazonへ
主人公が日本に女子テニスを広めるために奮闘する
投稿サイトで1位を獲得した「LINE感覚で読める」
まったく新しいジャンルの“自己啓発恋愛小説”
仕事もプライベートも冴えない日々を送っていた雄大。
そんな彼のもとにかつての幼馴染しおんが突如現れた。
14年ぶりの再会に喜ぶ雄大だが、
近況を語る彼の言葉にしおんは顔をしかめる。
そして彼女は雄大が幸せになるための「法則」を語り始めた。
ときに切なく、ときにコミカルに、二人の男女がおりなす、
読むだけで成功体質が身に付くサクセスストーリーの決定版!
最近の画像つき記事
-
ソフィア・ケニン、リヨン・オープン優勝!(女子テニス359)
-
ソフィア・ケニン、リヨン・オープン決勝進出!(女子テニス358)
-
ソフィア・ケニン、全豪オープン2020優勝!ガルビネ・ムグルッサを撃破!(女子テニス357)
-
ソフィア・ケニン、大大大金星!アシュリー・バーティーを撃破!(全豪オープン2020)(女子テニス356)
-
ソフィア・ケニン、勝つには勝ったが・・・(全豪オープン2020)(女子テニス355)
-
ココ・ガウフはなぜ負けたのか(全豪オープン2020)(女子テニス354)
-
大坂なおみは、なぜココ・ガウフに負けたのか(全豪オープン2020)(女子テニス353)
-
ワン・チャン、セレナ・ウィリアムズを撃破!ココ・ガウフ、大坂なおみを撃破(全豪オープン2020)(女子テニス352)
-
ベンチッチ、オスタペンコを撃破!(全豪オープン2020)(女子テニス351)
-
シャラポワはこのまま引退してしまうのか?(全豪オープン2020)(女子テニス350)
とりあえずグループ分けは終わってますね。
スビトリナはローズグループで、ベルテンス(バーテンズ)とベスニナだし勝ち抜けは問題なさそうですね。
まあウォズニアッキがいない以上相手になるのはクビトバと調子が戻っていればコンタですかね。
ふと思ったのですがこの試合前自分が仮にムグルサ陣営にいたら何ができたのかと考えてみたのですが、それは去年のラドワンスカ戦でパワーテニスで圧勝していた試合を見せることだったと思うんですよね。
まあ仮に見せたところでムグルサのショットが戻ってくるのかは当然疑問符がつくし効果はない可能性のほうが高いかなとは思いますが。
クズネツォワ戦はラウンドロビン敗退が決定していたのかもしれませんが、ムグルサ自身は良かったしクズネツォワはさすがにモスクワからフルセット続きで調子を落としていましたね。
最後勝ててよかったとは思いますがkただ来年のムグルサがどうなるのかは全く読めないですが。実際今年のスタートは良くなかったですしね。
ムグルサが足の指の痛みを訴えて1stセット終了時に棄権した試合が、
もしかしたら今年、最初に観た試合かもしれません。
決して結果論ではなく、このときから嫌な予感がして、
全豪オープンで謎の無気力試合で負けたときに
「今年のムグルサはダメかも」と思いましたが、
終わってみれば、全仏優勝以外は
1度も決勝戦にすら進めてませんからね。
その全仏も、テニスというより腕相撲のような力比べ大会でしたし。
ボクは、ムグルサはこうやって、好不調の波を繰り返すテニス人生を送ると思っています。
それがパワーテニスの代償かなと。
ムグルサが「クビトバの劣化版」というのは、クビトバの方が「谷の期間」が短いというか
きっちりと「山の期間」を作って、最終的にはポイントを稼ぐ技術が上だと思っているからです。
しかし、エリートトロフィーのドロー表が出ませんね・・・。
大村さん、エリートトロフィーのスビトリナは見れそうにありませんでしょうか。
PS:ファイナルは荒れに荒れクズネツォワがラウンドロビン突破し優勝したのはチブルコバでした。
放送したらもちろん観たいですが、東レPPOのあと、ブログのアクセスが激減しているので
(推測ですが、DAZNが始まって日本語でも女子テニスを観られるようになったために、
ブログを書く人が増えて、読者が分散しているのかもしれません)
2000名を超えていた読者が、今は500人ほどしかいませんので、
貴重な時間を割いて、ブログに書き続ける意味づけを失っているところです。
正直、来年はブログは英語で書こうかと真剣に考えています。
そうすれば、テニス選手の目にも留まるかもしれませんし。
ちなみに、ムグルサとクズネツォワはどちらが勝ったのでしょう?
もし、ムグルサが負けたようであれば、ボクが全米オープンのときに予想した
「ムグルサは、仮にツアーファイナルズに出場しても、ラウンドロビンで全敗」という
当たって欲しくない予想が当たったことになりますが・・・。
いずれにしても、ムグルサの5-4でのダブルフォルトと、
インのボールをチャレンジしなかった、この2つのミスが悔やまれます。
なんだかんだと、ボクはムグルサが大好きなので。
ラドワンスカってパワー以外は全て完璧なプレイヤーと言えますね。右利きならフォアクロスでパワーでゴリ押ししてラドワンスカから甘い球を引き出すということを愚直にやるべきだと思いますね。
テクニックやら戦略面でラドワンスカを上回ろうと考えてはいけないですね。それくらい自分はラドワンスカはとんでもないと思っていますし、もしラドワンスカにパワーがあればそれこそ覚醒クビトバに対抗できると思えるし、とっくにセレナの時代を終わらせていたでしょうね。
ボクは、ラドワンスカ贔屓ではないので3割引きくらいで観ているのかもしれませんが、
沢松奈生子さんの、
「ラドワンスカは強くないのに勝てない。だから相手選手はイライラするんだ」
というセリフに共感を覚えています。
ブログにも書きましたが、そんなに強い選手が、TOP10プレイヤーになって8年経つのに
その間に32回もGSに出て、GSの準優勝が1回という記録が、彼女の限界を如実に示していると思っています。
実際、ロングラリーの根負けも多いですし、フットワークさえよければ、
ラドワンスカのドロップショットはそれほどの脅威でもないと思っています。
ただ、スマッシュを打っても打っても返されて、ミスに付け込まれて、
取れていたはずのセットを失い、メンタルが削られて、
気が付いたら試合にも負けていたというパターンなので、
各選手とも有効なラドワンスカ対策が立てられないのかな、とは思っていますが。
仰るとおり、弱点がないのは事実ですね。