5.いまさら聞けない世界一簡単なディープラーニング講座 2.ディープラーニングの肝は「比率方式」と「しきい値」である
では、早速次図を見てください。
こうして上流からバケツで水を流したときに、一番下の4つのバケツ、すなわちニューロンのうち、一番たくさん水がたどり着いたニューロンが正解、もしくは正解の可能性が高いというのがディープラーニングの考え方の基本です。
ここでは、一番左の「哺乳類」のバケツにより多くの水を集めたいとします。
そして、水が流れるときに、「恒温動物」「肺呼吸」「卵を産まない」「脚がある」という条件で水の流れが変わるとしましょう。
このときに、「脚がある」という水路が広過ぎると、そちらに水が流れ過ぎてしまって、脚がないクジラを哺乳類と判定できなくなってしまいます。
そこで、クジラが哺乳類であると判定できるようになるまで、水が流れ過ぎないように、「脚がある」という水路を狭めていきます。
ただ、その水路をゼロにしめてしまうと、ほかのすべての脚がある哺乳類まで「哺乳類ではない」と間違えてしまいますからそれは論外です。
すなわち、「水路の広さを変えながら正解にたどり着く。それがディープラーニングの基本的な考え方」なのです。
あくまでもたとえですが、水路の広さを調整するように経路の「重み」を変えて、何割がたどり着いたかの比率で判断をします。
また、最終的に流れ着いた水の量に「しきい値」を設けることで、同じ「哺乳類」という回答でも、「確実に哺乳類」「たぶん哺乳類」のような「人間ぽい」曖昧な回答を導き出せるのがディープラーニングの特徴です。
今出てきた「しきい値」とは、「結果が変わってしまう境目」のことです。
仮に、「確実に哺乳類」の水の量の80%をしきい値としたら、100%が85%になっても「確実に哺乳類」ですが、80%が79%とほんのわずか数字が変わるだけでも、「たぶん哺乳類」に結果が変わってしまいます。
こうした境目の数値を専門的に「しきい値」と呼びます。
また、私たちは普段しきい値を意識せずに会話をしていますが、大雑把とはいえ、実はしきい値に基づいて会話をしているケースが大半です。
しきい値が80%の場合、持論に80~100%程度の自信があれば、「絶対に○○だ」となりますし、自信のほどが60%程度なら、「たぶん○○だと思う」と会話を揺らします。
前述のとおり、このしきい値があるからこそ、ディープラーニングで自力学習をしたAIは、「人間くさい」、もっと言えば「もはや人とは区別がつかない」ような会話が可能になるのです。
さて、第4回連載と今回と、2回に分けて解説してきましたが、ディープラーニングに関してはこの程度の理解で十分です。
こうして「重み付け」を調整していくのがAIにとっての「学習」の仕組みのベースです。
また、複雑な階層のニューロンに対して人が重み付けを調整するのは到底不可能な話ですので、この値は自動計算できる仕組みが開発されています。
もっとも、第4回連載と今回の2回の講義はあくまでも「基礎知識」ですので、そこまでは踏み込まずにこれ以上の解説は控えます。
ただし、学習意欲旺盛な人のために補足だけしておくと、この自動計算の仕組みの代表的なものとして「誤差逆伝播法(バックプロパゲーション)」と呼ばれるものがあります。
最近ではさらに研究が進んで、階層を重ねることによる精度の劣化の問題や、計算速度の問題などが解決されてくると、今度はある刺激を分類するためにキーとなるニューロン、つまり、典型的な特徴に反応して発火しやすいニューロンやニューロン群の自動検出ができるようになってきています。
一言で言ってしまえば、AIに膨大な量の刺激を与えるだけで分類ができるということですが、この点に関しては「畳み込み(Convorution)フィルタ」を使った「CNN」や「再帰的(Recurrent)」な接続構成によって、連続的な情報を演算結果に反映できるようにした「RNN」といった仕組みがあります。
こうしたディープラーニングをする「子どものAI」。
一方で、人が一から教えて丸暗記させる「大人のAI」。
同じAIといえども、両者でどれほどの違いが出るのかは、第1回連載の中で「子どものAI」であるGoogle翻訳と、「大人のAI」である別の翻訳サービスに同じ英文を日本語に翻訳させて、まったく異なる結果になるケースを紹介していますので、そちらを併せてお読みいただけたら幸いです。
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