孤独を受け入れる、ということ
まだまだ夏が頑張っています。今朝も強い夏の日差しが、東側のバルコニーから容赦なく注ぎ込んでいました。目覚めてリビングにやってくると、まだまだ夏だなぁ、と嬉しいような残念なような複雑な気持ちになります。それでも蝉の声は、ずいぶんと元気が無くなってきましたね。
気持ちのいい天気なので、今日は買い物ついでに遠出しました。思いつくまま妻と列車に乗り、たどり着いたのは……。
大好きな京都です。40年以上も暮らした街ですから、この京都タワーを見るとホッとした気持ちになります。盆地特有の暑さも一段落したようで、気持ちのいい風が吹いていました。初めて見つけたカレーショップでランチをしたのですが、大正解! 久しぶりに外食をして美味しさのあまり唸ったほどです。
でも今日はそのままとんぼ返り。来月になればあることを計画していますので、じっくりと遊びに来る予定です。それにしてもさすが観光地の京都。平日ですが大勢の人で駅は賑わっていました。外国の方も多かったです。紅葉の時期になれば、もっと大勢の人でごった返すのでしょうね。
さて、昨晩読了した本です。
『キッチン』吉本ばなな 著という本です。
誰もが知っている1988年に出版されたベストセラーですが、私はまだ読んだことがありませんでした。ちょうと図書館の本を読みきってしまい、手元に紙の本がなかったので、以前に購入しておいた電子書籍でこの作品を読みました。購入したといっても、無料券をもらったのでその引き換えでダウンロードしたものです。ちょうど値段がぴったりだったので、機会があれば読もうと保存していた作品でした。
勝手なイメージで今まで読まなかった作品ですが、実に素晴らしい小説でした。『キッチン』と続編にあたる『満月 キッチン2』、そして『ムーンライト・シャドウ』という3つの短編で構成されています。『キッチン』は文句なしの作品ですが、私は『ムーンライト・シャドウ』にも感動しました。ラストで思わず泣いてしまいました。
どちらの作品も愛する人を亡くしたことによる孤独を、どのようにして受け入れていくか、ということがテーマになっています。親や恋人を予想外の出来事で亡くした時、私たちはすぐにその現実を受け入れることができません。そして一人取り残された、という強烈な孤独感と向き合わなければなりません。とても辛い、とても苦しい、でもこんな生き方もあるよ、と登場人物を通じて著者が語っているように思いました。
『キッチン』では幼い頃に両親を亡くし祖母に育てられていた、みかげという女子大生が主人公です。ところが祖母も亡くなり、天涯孤独の身になります。そんな時、祖母の行きつけの花屋でバイトをしていた雄一という大学生とその母親に、一緒に暮らさないかと誘われます。その母親は超美人なのですが、実はおかまバーを経営する父親でした。そんな不思議な3人での生活が始まります。
家族を象徴するキッチン。誰かと一緒に食べる食事の美味しさ。そんな生活を経験しながら、みかげは祖母の死を受け入れていきます。そして他の2人も心に大きな孤独を抱えていました。雄一の父はなぜ女装しているのか。それは雄一の母、つまり自分の妻が若くして亡くなった時、もう自分は男性でいられないと感じたからです。それほど強い悲しみでした。愛する妻の死を受け入れることができず、自分が男であることをやめようとした結果でした。
そんな雄一の父も、暴漢にあって殺されてしまいます。残されたみかげと雄一は、再び孤独と戦うことになります。そんな二人がキッチンを通じて、前に進もうと決心していく物語です。
『ムーンライト・シャドウ』は、さらに切ない物語です。主人公のさつきは、高校の同級生だった等と4年間交際しています。等の弟である柊とその恋人の4人で、いつも楽しく過ごしていました。ところがある日、柊の恋人を車で送った等が事故に遭います。二人は即死でした。
さつきは最愛の恋人を亡くし、柊は兄と恋人を同時に失います。柊は恋人のことが忘れられず、彼女のセーラ服を着て高校に通っているほどの悲しみでした。そんなさつきに謎の女性である、うららと名乗る人物が現れます。百年に一度の奇跡が訪れるから、一緒に体験しないか、とさつきを誘います。
その奇跡が、もう涙、涙、涙でした。思い出しても泣けてきます。そして感動します。恋人に別れの言葉さえ言えなかったさつきの思いが、その奇跡によって癒され、彼女の人生を一歩前に向かって後押ししてくれました。そして同時に柊にも奇跡が起きます。これも泣けたなぁ。
吉本ばななさんは、とても素敵な作家ですね。電子書籍を購入したのが、偶然でないことがよくわかりました。他の作品も読んでみようと思います。
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