あなたは男、女、それとも第3の性?
秋雨前線が停滞しているので、不安定な天気の神戸です。朝から厚い雲が大阪湾をおおっていて、時おり強い雨が降っています。
湿度は高いのでしょうが、気温はかなり低いように思います。我が家の冷蔵庫は、今日をもって製氷機能を終了しました。自宅にはアルコール類は置いていませんので、氷を使うのは夏のそうめんやアイスコーヒーを作るときだけです。ですから来年の夏まで、氷とはオサラバです。
すっかりホットコーヒーが美味しい気温になりました。1日に2杯しか飲みませんが、私はコーヒーが大好きです。お気に入りの豆で淹れた濃いめのコーヒーを飲む午後のひと時が、私にとって至福の時間です。
コーヒーと共に欠かせないのが音楽。Apple Musicのおかげで、今まであまり聞くことのできなかったミュージシャンの音楽を楽しんでいます。最近ハマっているのがデヴィット・ボウイです。
中学校の頃は金銭的に余裕がなかったので、なかなかじっくり聴きこむことができませんでした。でも今は聴き放題ですから、過去のアルバムをじっくり聴いています。とても不思議感のあるミュージシャンですが、すっかりお気に入りになってしまいました。
ここでは書けませんが、実は私とデヴィット・ボウイには深い、とても深〜〜い縁があります。だから私は彼のことがずっと気になっていました。変に思われるかもしれませんが、いつの日か個人的に語り合える、と心のどこかで確信しているほどです。
デヴィット・ボウイが世界中の人に愛されているのは、その音楽だけでなく彼が持っている人間的魅力に負うところが大きいと思います。生物学的には男ですが、そうした概念で割り切れないものを感じさせます。かといって女性でもない。ジェンダーを感じさせない魅力なのです。いわゆる「第3の性」と呼ばれているものですね。そのことをテーマにした物語を、昨晩読了しました。
『ぼくから遠く離れて』辻仁成 著という本です。
とても不思議な物語でした。でも目の前の深いもやがすっと消えていくような、言葉にできない清涼感が残る小説でした。
主人公は安藤光一、という大学生です。作家を目指す学生が集まる創作科に所属しています。ある日光一にメールが届きました。Keyと名乗る謎の人物でした。
Keyは、自分が空っぽで何もないように感じている光一に対して、本当の自分を見つける手伝いができる、と言います。あなたのなかにはもう一人の自分である、アンジュという存在が隠れているとのこと。アンジュを引き出すことで、ようやく自分を知ることができる、と光一を説得します。その方法が女装でした。
いろいろな経緯があり、光一は女装することで自分の中のアンジュを知ることになります。そのことにより葛藤を抱えます。本当の自分とは何か、わからなくなってしまうのです。そしてそれまで滞っていた小説を書くことで、その自分の葛藤に折り合いをつけようとします。著者である辻さんの姿が、そこに見えているような気がしました。
Keyが誰なのかを見つけることが、この物語を進行させていきます。私は前半で、すぐにKeyの正体を見破ってしまいました。東野圭吾さんの小説で鍛えられていますからね! 男とは、女とは何か。性別とは何かを問いかけている物語です。そして著者によって提示されているのが、どちらでもない「第3の性」です。
性同一性障害を抱える、マナという男性に光一が訊ねます。
「ねえ、君は自分ではどう思っているの? 女性? それとも男性? ごめん、差別心で聞いているんじゃない。でも、君の口からそのどちらであるかを聞いてみたい」
するとマナは答えます。
「どっちでもない。わたしは、自性。自分の性を持っている」
この物語は読みようによっては、人間の意識をとても深い部分にまで連れていってくれると思います。私たちに本来は性別などありません。過去生においてはどちらの性も経験しています。この世界で子孫を残すために、二元化した男女という姿を持っているだけです。魂の本質に性別などあり得ないのです。宗教画で描かれる天使の姿に性別を感じませんよね。
それでもほとんどの人が、この世界で生きている限り男であり、女であります。私もこの人生を男として生きることは、間違いありません。でもそれが全てではありません。私の魂の奥深くには、女性としての部分も残されているはずです。和解せずに押し込めている感情もあるでしょう。
現代社会では性の多様化が容認されつつあります。同性の婚姻が法的に認められている国や地域が増えてきました。とてもいいことだと思います。二元化によって偏った性別の認識を抱えている人類が、その幻想を手放そうとしつつあるのかもしれません。
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