普通でないゆえの孤独
寒波の余波が残っていて、今日もかなり寒い神戸です。ゴミ出しに行く時、玄関の前の外部階段を下りていきます。西北に面した階段ですので、六甲おろしがまともに吹き付けます。今朝もその冷たい突風に震えながらゴミを出してきました。でも春も近づいていますよ。
昨日の散歩中に見つけた白梅です。その後方では紅梅のつぼみも膨らんでいます。木蓮は綿毛のようなつぼみを成長させています。この寒波が過ぎて来週の後半には、春のような空気が入ってくるそうです。やっぱり全体的には暖冬傾向のようですね。
さて、今日の午後に観た映画です。映画館で観ることができなかったので、レンタルで鑑賞するのを楽しみにしていた映画です。
『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(原題The Imitation Game)という2014年の映画です。
主人公は第二次世界大戦中に、解読不可能と言われた「エニグマ」という暗号を解読したイギリスの天才数学者である、アラン・チューリングです。秘密裡の仕事ゆえ世間に認知されず、戦後は自ら命を絶ってしまった悲劇の人物です。
私がこのアラン・チューリングという人物の名前を知ったのは、ある本を読んだことがきっかけです。
『暗号解読 ロゼッタストーンから量子暗号まで』サイモン・シン著という本です。
暗号の歴史について書かれた本で、これを読むだけで暗号の仕組みが理解できます。簡単な問題も付いていて、とても楽しめる本です。この本の中で、アラン・チューリングと彼の業績について、詳しく書かれていました。もちろん「エニグマ」という暗号機がどれほど完璧な暗号機なのかも説明されています。この本を読んでから映画を観ると、映画をより深く理解できると思います。
第二次世界大戦はそれまでの戦争と違っていました。それは「情報戦争」だったということです。暗号を使って攻撃目標を隠蔽することで、敵を撹乱することが攻撃の常道でした。日本が太平洋戦争でアメリカに負けた理由の最たるものが、暗号を解読されたことです。
それはヨーロッパでも同じで、もし「エニグマ」がアランたちによって解読されなければ、ドイツが勝っていただろうと言われています。現在の世界地図が大きく書き換えられることになったかもしれません。
しかし天才ゆえに孤独だった人です。さらに同性愛者だったことで追い詰められていきます。当時は同性愛者というだけで投獄されたのです。普通でなかったアランです。天才ですから。普通でないことで暗号を解読できたのですが、それは同時に彼の人生を縮めてしまった理由でもあります。
完全な機密事項の仕事ですから、誰にも話すことができません。戦後にアメリカの数学者が暗号に関する特許を取りましたが、それはすでにアランたちが実用化していたものでした。ところが戦時中にそうした暗号を解読していたことを公表できません。ですから自分たちの方が先に発明したことを訴えることができないのです。目的はただ一つ。戦争に勝つことだけでしたから。
このアランを演じたベネディクト・カンバーバッチの演技は言葉で言い表せないほと素晴らしい。本当にすごい俳優さんです。以前から若手では私のイチオシでしたが、その思いがさらに強くなりました。映画の内容を知らなくても、彼が主演しているだけで観る価値があると思わせる役者さんです。
アランの孤独と葛藤を、見事に演じきっています。そしてアランを支えたジョーン役のキーラ・ナイトレイの演技も秀逸でした。ハッピーエンドの映画ではありませんが、アランという人物の人生が心に焼き付いています。
アラン自身の人生は幸せではなかったかもしれません。でも映画でジョーンが言ったように、彼のおかげで消えなかった街や、死ぬことを免れた大勢の人がいます。
『時として誰も想像しないような人物が、想像できない偉業を成し遂げる』
映画の中で何度も語られるセリフです。まさにアランの人生を象徴している言葉だと感じました。とても素敵な映画です。おすすめですよ。
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