優しいリアリズム
久しぶりに朝からブログを書いています。出かける前に記事をアップしておいて、午後から夜まで仕事に集中する予定です。へそ曲がりな性格ですので、多くの人がお盆休みだと思うと、俄然仕事のモチベーションが上昇します。困った性格ですね。
相変わらず西日本は猛暑ですが、ここのところ夜が過ごしやすいので助かっています。夕方になると六甲山からの冷たい風が吹き込むので、快適に過ごすことができます。昨晩も部屋中で扇風機を回しているような風でしたので、読書は進みますし、夜も気持ち良く眠ることができました。
今日の神戸も乾燥注意報が出ていますから、きっと乾いた風が吹いてくれるでしょう。さくっと買い物を済ませて、自宅でゆっくりと過ごしたいと思います。さて昨晩に読了した本です。
『21世紀の自由論 「優しいリアリズム」の時代へ』佐々木俊尚 著という本です。
佐々木さんは以前から気になっていた方で、Twitterをフォローさせていただいて、いつも勉強させていただいています。ツイートでこの本の情報を得たので、早速読ませていたできました。それまでモヤモヤしていたことがすっきりとした、とても素晴らしい著作です。
何がモヤモヤしていたかと言いますと、リベラルという言葉の概念です。アメリカでは二大政党制が確立していますので、共和党が保守、そして民主党がリベラルという位置付けです。これに関しては何となくですか理解できていました。
リベラルとは直訳すれば「自由」です。自由主義という意味ですね。国王に支配されていたヨーロッパの民衆が自由を求めるため、王の支配からの自由や圧制からの自由を求めてきたのが始まりです。束縛からの自由であって、消極的自由と呼ばれているそうです。
それが19世紀に入ると、みんなが安心して暮らせる自由、文化的な生活を送る自由というように、実現したい世界を求める自由に変化します。積極的自由と呼ばれています。現代のリベラルの基本概念はこうなります。
「人々には生まれながらの自由がある。みんなが自分で人生を選択し、自由に生きていくためには、それを妨げるような格差や不公正さを取り除かなければならない」
ところが日本の現状に当てはめると、このリベラルという概念が合致しないように感じていました。そんなモヤモヤを佐々木さんが解消してくれました。日本におけるリベラル勢力というのは、いわゆる野党です。でもその言葉が日本で使われるようになったのは、最近のことだと述べられています。
アメリカとソ連が冷戦時代だったころは、革新派と呼ばれていた共産党や社会党を支持していた人たちが、最近になってリベラルと名乗っています。なぜなら、社会主義が実質的に崩壊してしまったからです。つまり都合が悪いので、目先を変えているだけですね。
ですから日本のリベラルに対して、佐々木さんは「リベラル」と括弧を付けて表示されています。まがい物だということです。日本の「リベラル」は、ただ与党に反対することだけしかやらない「反権力」になっているだけだと主張されています。政治的思想や戦略があって反対しているのではなく、やみくもに与党のやることに反対しているだけなのです。
ですから自民党がリベラルな政策を実施しようとしたら、「リベラル」たちは反対します。それは変でしょう? 普通なら賛成するはずです。ところが代案として超保守的な政策を提案するのです。「リベラル」というのが言葉だけだとよくわかります。佐々木さんの指摘を読んで、ようやくわたしが覚えていた違和感の正体がわかりました。単なる「反対者」たちだったからです。
大切なのは現実を直視することです。世界をありのままに見ることだと思います。佐々木さんは反原発運動についても述べておられます。ゼロリスクという概念が根底に存在しているゆえ、危険な原発は全廃しろ、という極端な意見になってしまいます。政府のチェック機関を自負するマスコミも、「リベラル」としてこれを煽ります。ですから一般の人たちもそれを鵜呑みにしてしまうのです。
ただ反対することに固執している「リベラル」たちは、原発のメリット、デメリット、そして廃止するコストや存続させるコスト冷静に判断したうえで、方針を決めていくという客観的な過程が完全にぶっ飛んでいます。「廃止しろ!」の一点張りだけです。
佐々木さんは未来の社会が持つべき視点として、リアリズムを提唱されています。先ほど書いた、現実をありのままに見ることです。しかし現実世界というのは、冷たい論理が支配している世界でもあります。明らかに格差が存在していて、公平や平等を感じることが難しい世界になりつつあります。それはグローバリゼーションが持ち込まれことによって、日本が今までの経済大国でなくなってきているからです。
そこで佐々木さんが提唱されているのは、「優しいリアリズム」です。リアリズムという冷たい論理のなかに、「情」を持ち込もうという考え方です。理も情もともに大切にしながら、中庸の優しいリアリズムを目指していく世界です。
短いこのブログでは書ききれませんが、現代社会の状況とこれからの課題を、この1冊で知ることができます。いろいろなことを考えさせてもらえた、とても素晴らしい良書です。オススメですよ〜〜!
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