火星に住むつもりかい?
何よこの暑さ。夏が戻ってきましたね。湿度の高い南風が吹いて、空には積乱雲が見えます。あの爽やかな秋のうろこ雲はどこへ行ってしまったのでしょう?
でも今日も帰り道は、汗をかきつつ歩きました。本当はバスに乗るつもりだったのですが、最後のスーパーを出た時に太陽が雲に隠れていて風が吹いていたので、うっかり歩いてしまいました。途中で熱波を浴びながら、ふ〜ふ〜言いながら坂道を上ってきました。
そんな夏のような暑さでも、金木犀があちらこちらで芳しい香りを放っています。秋の香りですね。公園へ遊びにやってきた保育園児たちが、保母さんに金木犀の説明を受けているのを見かけました。ああして秋の植物を覚えていくのですね。
さて、昨晩に読了した本です。
『火星に住むつもりかい?』伊坂幸太郎 著という本です。
昨年の2月に出版された小説なので、伊坂さんの作品としては比較的新しいものです。まだ読まれていない方もおられると思うので、ネタバレしないように注意して紹介したいと思います。いつもながらの完璧な伊坂ワールドでした。
舞台は現代の日本です。でもちょっと事情が違います。戦時中の特高警察と同じような、平和警察という組織が存在しています。日本の平和を乱すと思われる人物を見つけ出し、拷問によって自白を強要します。ヨーロッパ中世での「魔女狩り」と同じように、密告を中心として活動しています。
そして本当に悪人かどうかは関係ありません。「魔女狩り」ですから、お前は反逆者であるという前提で拷問を受けます。そのまま否定し続ければ拷問で死ぬことになります。でも拷問に耐えかねて自白しても死刑になります。どちらにしても、一度でも平和警察に目をつけられたら死ぬしかないということです。
死刑方法も中世のフランスと同じです。街の広場に人を集めて、ギロチンで公開処刑されます。冤罪によって公衆の面前で首を切り落とされるのです。この設定だけでも十分に伊坂ワールドだとわかっていただけるはずです。
ところが正義の味方が登場します。その平和警察に不当な扱いを受けている人を助け出すヒーローが現れました。つなぎ姿でマスクをしているので、顔は見えません。バッドマンやスパイダーマン、あるいはアイアンマンのような存在です。
でもそのヒーローは、平和警察に拘束されているすべての人を助けるわけではありません。ある特定の人だけを助けます。この小説も、なぜ一部の人間だけを助けるのかということが、謎として提供されます。その共通点を見つけ出すことで、犯人像が見えてきます。このヒーローがどんな理由で助ける人を選んでいるかが気になる方は、ぜひ本編を読んでみてくださいね。
「善意」とは何か? を問いかけた小説です。ヒーローの祖父は1億円の宝くじが当選しました。金に無頓着な祖父は、借金で困っていた友人を助けます。ところがそれを知った周囲の人間が、その金を目当てに押しかけます。困り果てた祖父が断ると、偽善者として非難の嵐を浴びることになります。その結果、祖父は自殺してしまいました。
そしてヒーローの父は、自分が入院している病院で火事に遭います。自分の足で避難できない人を担いで助けます。ところが入院患者は多いので、キリがありません。でも自分の父が偽善者と呼ばれて自殺したことを思い出し、一人でも多くの人間を助けようとします。その結果、焼死してしまいました。
ですからこのヒーローは祖父と父の経験から、すべての人を助けることなんて無意味だと理解しています。どれだけ正義感に駆られても、助けることができない人が出てきます。善意を実行しようとしても、助けてもらえなかった人からは偽善者と呼ばれてしまう。だから助ける『基準』を明確に決めています。この『基準』は、わたしも最後までわかりませんでした〜〜!
タイトルを見ると、SF作品かと思いますよね。でもまったく違います(笑)
ヒーローを手伝った警察庁の捜査官が登場します。平和警察のやり方に反発している人物です。ラストでどうにか解決するのですが、決して住みやすい世界になったわけではありません。世の中は相変わらずに苦しみで満ちてます。その捜査官がヒーローに向かって言うセリフがあります。
「世の中は良くなったりしないんだから。それが嫌なら、火星にでも行って、住むしかない」
だからこんなSFっぽいタイトルになったというわけです。とにかくめちゃくちゃ怖くて、めちゃくちゃ笑った小説でした。
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