優れた作品の条件
昨晩は午後10時ころからとんでもない嵐になりました。低気圧の通過にともなって、まるで台風のような風と雨が窓を叩いていました。午前1時くらいになるとピタッと収まりましたが、明け方になると今度は季節風です。早朝はその風のうなり声で目が覚めました。
なんせ六甲山が近いので、この時期は慣れっこになるほど季節風の音を聴かされます。これからさらに寒くなるそうですので、いよいよ真冬仕様の防寒対策が必要になってきました。明日の外出はダッフルコートにしようかな?
そんな風が吹き荒れた夜ですから、眠る前は音楽が最適です。相変わらずレディー・ガガのヘビーローテションを続けています。彼女が発表している全曲を記憶しましたが、まだまだ聴き足りないと感じています。
なぜなら、聴くたびに新しい発見があるからです。最初は曲の雰囲気をつかむのに精一杯です。数回聴いて曲を覚えると、ようやく演奏やコーラスに意識が向きます。そして同じアルバムも20回くらい聴きますと、かなり詳細なことが耳に届くようになります。
こうして何度も聴けるアルバムというのは、わたしにとって優れた作品だと断言できるものです。それは音楽だけでなく、映画や本でも同じです。優れた作品だとわたしが認識しているものは、映画でも本でも数え切れないほど接しています。
昨晩は風の音を聴きながら、なぜ優れた作品はそれだけの頻度に応えることができるのかを考えていました。頭にひらめいたの『レイヤー構造』です。Photoshopのような画像処理ソフトを使うと、最初に出会う言葉ですね。
見た目は一つの画像に見えても、いくつもの写真が階層構造になっているという状態です。優れた作品というのは、そのレイヤー構造のような層を有しているのではないかと思います。それが想像を超えるほど分厚いので、何度も観たり聴いたり、そして読んだりできると思うのです。
最初は一番外にあるレイヤーにしか接することができません。でも回数を重ねてくると、外側のレイヤーに慣れてくるので意識が向かなくなります。そうすると次の層に到達して意識することができます。それを繰り返して、より深い層まで入り込んでいけるのだと思います。
いわゆる薄っぺらな作品というのは、そのレイヤー構造が少ないのでしょう。だからすぐに最深部まで到達してしまうので、つまらなく感じます。最初は面白いように思えてもすぐに飽きてしまう作品は、それほど深いレイヤー構造を有していないのだと思います。
そうなると作者、そして視聴者あるいは読者との勝負になってきますね。レイヤーの奥深くに進むためには、ただ回数を重ねるだけでは限界があると感じます。ある程度は回数によって深いレイヤーに進めても、どこかで頭打ちになってしまいます。それはなぜなのか?
観る側、あるいや聴いたり読む側が、そのレイヤー構造と同じものを有していないからだと思います。そのレイヤー構造を一言で説明すれば、『経験』という単語に置き換えることができるかもしれません。
人生においてより深く、より多くの経験をしている作家は、必然的に分厚いレイヤーが作品に反映されていくような気がします。その最深部というのは、同じレイヤーの『鍵』を持っていないと、侵入できないように思えるのです。
よくありますよね。ある時期に観た映画がつまらないと思ったのに、何年か経過してから観たら感動したということが。それは作品自体が変わったわけではありません。観る人のレイヤーが増えたのだと思います。だからより深い部分が理解できるようになったのでしょう。
そう考えると、表現者に求められるのは多層のレイヤーなのかもしれません。多くの経験を積み、様々なことで悩み苦しむことで、レイヤーの層を厚くしてくことができます。そしてそれを作品に投影できるようになると、何度も接することに耐えうる厚みができるのでしょう。
より深い表現ができるため、そして表現されたものを理解するために、自分のレイヤーを厚くしていきたいと感じました。鋭い風の音を聴きながら、昨晩はそんなことを考えていました。
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