高羽そら｜たかはそら（作家、小説家）オフィシャルブログ

今や経済大国と言っていい中国。共産主義でありながら経済開放をすることで、世界に影響を与える存在となっています。ところが諸外国から人権問題について非難されたり、新疆ウイグル自治区やチベット等では民族を抑圧するような政策を続けています。

そんな自国の暗部に対して、中国国民の人たちはうかつに口を開くことができません。ネットでさえ検閲されていますから。ですから国際的にヤバい事実が露見しても政府は否定しますし、国民も極端に騒ぎ立てることをしません。

だからと言って、中国人の人たちが何も感じていないわけではないようです。ある事件をきっかけにして、中国国民の不満が爆発しています。

北京2200万市民が習近平政権に激怒した、あまりに悲惨な事件

それは今年の５月に起きた『雷洋（レイ・ヤン）事件』と呼ばれているものです。雷洋氏は28歳で、有名大学を卒業して中国環境経済協会に勤めています。結婚して娘が生まれたばかりでした。

今年の５月７日の午後11時、北京に到着した家族を迎えるために北京国際空港に行きました。その途中の路上でいきなり警察官に呼び止めれます。

「お前はたったいま、そこのフットマッサージ店で、違法の買春行為をやっただろう。5000元（約8万3000円）の罰金を払え！」

もちろん家族を迎えに来ただけだと否定しましが、警察官は聞き入れてくれません。５人の警官に取り囲まれて手錠をはめられ、路地裏で殴る蹴るの暴行を受けて亡くなってしまいます。

北京の弁護団がこの事実を知って立ち上がりましたが、政府によって解散を命じられました。ネットで拡散しようと思っても、あっという間に検閲が入って削除されてしまいます。

今年の12月23日に出た警官たちの裁判結果は、「軽微な法にしか触れておらず、起訴するにあたらない」と不起訴処分になりました。この判決に対して、さすがに北京のインテリ層たちの堪忍袋の緒が切れました。

天安門事件以来の悲劇だとして、大勢の人が政府に対する非難を呼びかけています。中国共産党の幹部養成大学でもある中国人民大学のOB・OG会有志も起ち上がりました。北京市豊台区人民検察院に対して、公開書簡を提出し、ネット上で公開しています。もちろんあっという間に記事は削除されましたが。

その勢いは衰えを見せず、中国全土に広がる勢いです。外国からの非難ではなく自国民から湧き出た抗議の声ですから、中国政府も対応に苦慮しています。もしかしたら現政権を転覆させるものになるかもしれない、という見通しまで出ています。

共産党による一党支配という政治体制をもつ、中国らしい事件だと思います。これまでは恐怖で国民の意見を押し潰してきましたが、そんな時代ではなくなってきたという象徴的な出来事です。

この事件に関してたはたまたま明るみになっただけで、このような出来事は数え切れないほどあるはずです。いまだに公務員の汚職が重要課題として取り上げられている国ですから、事実を闇に葬ろうとする姿勢は国家的な負の遺産だと感じます。

日本人としては、お隣の国ですから仲良くしたいと思います。個人レベルの交流では、とてもいい関係が築けているはずです。でも国家レベルになると、とんでもない分厚い壁が行く手を阻みます。尖閣諸島をめぐる問題がその典型例ですね。

現在の中国政府は、国民からこのような声があがっているという事実を真摯に受け止めて欲しいと思います。脅したり事実を隠蔽するのではなく、自由に議論することができる国家に変貌させるいい機会だと思うのですが。やはり共産党の一党支配では無理なのかなぁ。

日本人としては、とても気味悪く感じる事件です。自国民に対してこのような態度をとるということは、外国に対してもっとあからさまになるのではないでしょうか？　もし中国を旅行していて警察官に同じ理由で逮捕されたら、事実を聞いてもらえるのでしょうか？　とてもヤバいと感じる記事でした。

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