SOLA TODAY Vol.127
今年は邦画が盛り上がりました。『シンゴジラ』も『君の名は。』も記録的な興行成績をあげています。どちらの映画にも関わった東宝は笑いが止まらないでしょう。一見順調に見える日本の映画界ですが、実は大きな問題を抱えているようです。
その問題は、この記事を読むとよくわかります。邦画は二極化が極端に進んでいて、莫大な資金を投資したいわゆる大作と呼ばれるものか、限られた映画館でしか上映されないような予算の少ない映画に分かれています。新しい監督等を育てていく、中間どころの映画が公開される余地がないとのこと。
現在の日本の映画は、どれだけヒットしても監督等の制作側にはお金が入ってこないシステムになっています。東宝のような配給会社がその利益をすべて吸い取ってしまうからです。
映画の興行収入の5〜6割を映画館が持っていきます。そこから宣伝費に数億円をかけて、3割が程度が配給会社に入ります。さらに残った分を製作委員会で分けるので、実際に手を動かして映画を撮影した監督やスタッフには、どんなに映画がヒットしても最初に決めたギャラ以外は入りません。
製作者にお金が回りませんから、次の映画を作ることはできません。結局は資金力のある大手の手を借りなければ、映画を作ることができない現状です。そうなると確実に『売れる』見込みのある内容や監督、俳優が配給会社によって決められることになり、次代を担う人が育ってきません。このままでは日本の映画界は、再び衰退するのではと言われています。
特にアニメ界は悲惨な状況で、お金が末端まで回ってこないのでアニメーターたちの平均年収は110万円程度らしいです。これでは職業というレベルではないですよね。どれだけ情熱を持っていても、食べていくことができません。
そんなアニメ界に新しい風を吹き込んだのが、『この世界の片隅に』という作品です。わたしもネットでの評判を聞いていて、とても気になっている作品です。この映画の監督が企画を持ち出した時、どの映画会社も本気になってくれませんでした。
なぜならこの監督の前作がヒットしていなかったからです。大手の映画会社は利益が最優先ですから、どれだけ内容が素晴らしいと思っても冒険はしてくれません。実績がない人に対しては、資金が回ってこないシステムが完成されています。
ところがこのアニメ、11月に公開されてからじわじわと上映館数を伸ばし、大ヒットの基準となる興行収入10億円が目の前まで来ています。最初に大手が相手にしてくれなかったのに、なぜここまでやってこれたのか?
ご存知の方は多いと思いますが、クラウドファンディングを利用したからです。ネットを通じて資金を募集する方法です。出資者に納得してもらえるパイロットフィルムを作るため、「3週間で2千万」という目標を立ててクラウドファンディングにかけました。
ところが8日で目標額に到達して、最終的には4千万円が集まります。その費用で作ったパイロットフィルムを公開したところ、製作委員会に参加する企業が少しずつ増えて来ました。最終的には14社が集まり、映画を作る資金を得ることができたのです。
それを支えていたのは、この映画を完成させてほしい、観たい、という一般の人たちの応援でした。クラウドファンディングの場合、出資してくれた人に見返りとして特典があります。でも少しでも制作に費用を使いたいので、チケットを出資者に渡すような特典をつけませんでした。
その代わり、出資者に映画の進捗状況をこまめに報告していたそうです。「絵に色がつきました」「音が入りました」という具合です。そして完成したこの映画のエンドロールには、1万円以上出資してくれた2千人の名前がずらっと登場します。
これって、映画ファンにとっては何よりの特典ですよね! 自分の名前がスクリーンに流れるのですから。一緒になって映画を創ったという気持ちを感じることができるはずです。そしてそれを広めたくて、さらにSNS等で拡散していくでしょう。
『この世界の片隅で』というアニメは、これからの映画のあり方を象徴しているように思います。クラウドファンディングを使ったことは知っていましたが、ここまでいろいろな人の思いが積み重なった作品だとは思いませんでした。
それだけ愛される素敵な作品なのだと思います。観たくなりました!
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