海辺のカフカ
久しぶりに雨の外出になりました。午前中に家を出た時は小雨でしたが、自宅に戻るお昼頃には雨あしがかなり強くなりました。
そして風が強く吹き出したのですが、その冷たいこと、冷たいこと。もう少し寒かったら雪になるのでは、と思うほどの冷たい雨の神戸でした。午後になってさらに雨は強くなり、先ほどまでは豪雨といってもいいくらいでした。
お正月が穏やかだっただけに、寒さが身にこたえるような気がします。こんな日は温かいものを食べて、家でじっくりと読書をするのに最適です。明日もまだ祝日ですからね。そんな時間のあるときにお勧めしたいのが、昨晩に読了した小説です。
『海辺のカフカ』村上春樹 著という本です。
先日にちらっとブログでも書きましたが、文庫でも上下巻合わせて1,000ページ近くある長編です。じっくり味わいながら読んだので読了するまでに1週間ほどかかってしまいました。なぜなら、一気に読んでしまうのが惜しいと思うほど素晴らしい小説だったからです。
村上春樹さんの作品を手当たり次第に読み始めたところなので、まだまだ未読の作品はあります。これまで読んだなかでは『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』が最高に好きな作品でした。
でもこの『海辺のカフカ』は、一気にトップに躍り出た作品です。先日読んだ作品は、どちらかといえば苦手な作品でした。でもこれはわたしのツボに思い切りハマってしまいました。おそらくこれから先、何度も読みたくなる作品だと思います。
2つの物語が同時進行していきます。それはやがて一つにつながるのですが、そんなにシンプルなものではありません。わたしの文章力ではうまく表現できない世界観が描かれていて、ストーリーを紹介しようという気持ちになれません。とにかく読んだことがない方は読んでください、と言うしかない作品です(笑)
一人称で書かれている物語の主人公は田村カフカという名前です。15歳の家出少年ですから本当の名前ではありません。東京の中野区の自宅を家出して、何かに引き寄せられるように四国の高松へやってきます。
高松で私設の図書館と出会い、そこに住み込んで様々な体験をすることになります。最終的にはこの世とあの世をつなぐ、時間の存在しない中間的な世界に足を踏み入れ、自分が抱えていた恐れと向き合うことになります。
もう一つはナカタという老人が主人公になる三人称の物語です。戦争中に不思議な体験をしてから、文字が読めなくなりました。知的障害を持つ老人ですが、猫と話すことができますし、空から数えれきれないほどの魚を降らせたり、ヒルを降らせたりします。
ナカタはカフカ少年の無意識での代理となって、異次元世界を通じた少年の父親の殺害に手を貸してしまいます。そのことが理由で中野区を離れることになり、同じく何かに導かれて四国の高松へ向かいます。
その目的は、時間の世界と時間のない世界の境界となる扉を開閉するためです。そのことによって、本来あるべきだったものを元に戻すことが老人の役割でした。トラックの運転手だった星野という青年がこのナカタという老人に惚れ込み、『入口の石』の開閉に関わって大活躍します。
これだけ書いても、きっとなにがなんだかわからないでしょうね(笑)
そう、まさしくそんな小説なのです。実際に読まないとわからないですし、読み終えてもわからない部分が残ります。謎の解明に向かっていくように見えて、すべての謎が明かされるわけではありません。あえて謎を明かさないことで、読者の想像力が介入する余地を残されているのだと感じました。
かといって、決して放置されているのではありません。じっくり読み込めば、いくつも謎に答えとなるセリフや描写が見つかります。わたしも再度読めば、新しい気づきを発見することだろうと確信しています。
いや〜、マジですごい小説です。わたしはこの物語のショックがいまだに残っていて、しばらく他の小説を読みたくない気分になっています。まずは一度ビジネス書でも挟まないと、続けて小説を読めません。
村上春樹さんという作家が、世界で認められている理由がわかったような気がします。少し調べてみると、この作品は海外でもトップクラスの人気とのこと。それが納得できる作品です。できる限り時間を作って、他の作品も読み込んでいこうと思っています。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。