ツッコミは楽しいもの
関西人に求められるものとして、ノリツッコミができること。そしてオチのない話をしないこと。これは意外に大切!
せっかく相手がボケているのに、ツッコマないのは反則。何か話を始めたら、耳を傾ける人は誰もがオチを期待している。だからオチのない話をすると、ブーイングの嵐となる。
これは努力して身につけるものではなく、関西で育つと自然とそうなってしまう。
個人差はあるけれど、なんとなく風土として身についているものかもしれない。なんせ、物心ついたころから吉本新喜劇を見て育ってきた人たちばかりだからね。
ところで映画というのは基本的に完璧であってほしい。黒澤明監督の作品は、完璧すぎてツッコミどころがない。それはそれでとても素晴らしいと思う。
でも観ていてつまらないと感じる映画は、大して設定が面白くないのに、妙に完璧な作品であることが多い。
それだったら、まだツッコミどころのある映画のほうがいいかもしれない。誰かと一緒に見ながら、「そんなことあるかいな」とワァワァ言って楽しめるからね。それはそれで、意外と楽しいものだ。
そんなツッコミどころ満載の映画を観た。
『乱気流/タービュランス』という1997年のアメリカ映画。
公開された当時予告編を観て、ちょっと気になっていた。でも結局映画館に足が向かなかった作品。
『エアポート’75』という有名な航空パニックの映画がある。その映画と同じような印象を感じたので、二番煎じのような気がしていたから見逃していた。でも実際に観てみると、ちょっと雰囲気のちがう作品だった。
簡単に言えば、護送中の極悪人が暴れることで、刑事や機長、そして副操縦士まで殺されてしまう。操縦することができなくなった旅客機を、CAの女性が連続殺人鬼と戦いつつ、ラストでは無事に旅客機を着陸させるという物語。
映画が始まってすぐに、そのあたりが読めてしまった、ここで最初のツッコミが入ったw
そして映画の公開当時には違和感がなかったのかもしれないけれど、旅客機で護送するときに刑事は銃を携帯するの? もし何かの事情で犯罪者に銃を奪われたら(映画では実際に奪われるけけれど)大変な事態を招いてしまう。
そんでもって、機内でパンパン銃を発砲している。銃弾が壁を突き破って気圧が落ちたりしているのに、飛行機は落ちずに普通に飛んでる。妻と二人で思い切りツッコンだ。
刑事は予想どおりにお粗末な対応で、自ら墓穴を掘っている。オイオイ、なんでそんなに不用心なんやねん、と何度もツッコミたくなった。ここまでくると、かえって面白い!
連続殺人鬼を演じたレイ・リオッタは、完璧なサイコパス。映画のスタートは冤罪っぽい匂いを出していたけれど、途中から豹変する。こんだけヤバイやつなのに、それまで冷静にしていられるのに思わずツッコミたくなった。
そして主役のCAであるテリーを演じたローレン・ホリーの役どころも面白すぎ。今にも最大の嵐に突っ込みそうなのに、犯人に騙されて鍵のかかった操縦室を出て行く。管制塔は必死で自動操縦の設定を変えるように叫んでいるのに、飛行機が落ちたら殺人鬼どころじゃないやんか〜〜!
とにかくツッコミ過ぎて、かなり怖い映画なのによく笑わせてもらえた。
でも決してけなしているわけじゃない。ツッコミどころは多いけれど、パニック映画としてはよくできていたと思う。特に自動操縦の設定をするシーンなんて、ハラハラドキドキした。
車輪にトラックがからまって、それを戦闘機のパイロットが撃ち落としたシーンも面白かったなぁ。現実にはありえない出来事を楽しめるのが、映画の醍醐味でもあると思う。そういう意味では、よくできた映画だと感じた。
それにしてもレイ・リオッタのサイコパスの演技には感心した。たしかに普段からちょっとヤバイ目つきをしている。でも『フィールド・オブ・ドリームズ』というボクの大好きな映画で、シュレーレスジョーを演じた彼はまったく別人だったからね。
ちょっとヤバイ雰囲気は『グッド・フェローズ』で主役をしたときのレイに似ているかもしれない。でもボクはかなり好きな俳優さんなんだよね。
テリーを演じたローレン・ホリーという女優さんは、ちょっと微妙な感じだった。彼女じゃなければ、という印象が少なかったように思う。まぁ、サイコパスを相手にしなくちゃいけないので、難しい役だったかもしれないけれどね。
とにかく映画の出来は別にして、妻と二人でなんやかんやとツッコミながら、楽しい時間を過ごせた作品だった。ツッコミたい人にはオススメだよ!
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