SOLA TODAY Vol.185
子供のころの習慣のせいか、食事というものは家族で時間を共有するものだと思っている。父親が仕事から帰ってくるのを待って、全員そろってから夕食をとるというのが普通だった。
もちろん生活パターンが変わることで、そんな状態が続くわけじゃない。家族がバラバラで食事をとることが増えてくるし、忙しい現代人は食事の時間さえまともに取れなかったりする。
でもボクは、子供のころの食事に対する感覚を失いたくないと意識してきた。だから実家を出て一人暮らしをしているときでも、食事の時間というもの大切にしてきた。
ダラダラ何かをしながら食べるとか、カロリーメイトのような栄養補助食品だけの食事はしないように気をつけていた。
大事なのは『何』を食べるかだではなく、『どうして』食べるかだと思っていたから。
そんなボクだから、完全栄養食というものに興味がない。アメリカで「これだけ食べればいい」という食品が販売されているが、流動食のようなもので食べ物とは思えない。
ところが日本のスタートアップ企業が、今月の22日に新しい完全栄養食を売り出した。
完全栄養食パスタ「BASE PASTA」は世界を変えるかもしれない
このパスタは日本人の1日に必要な栄養素がすべて含まれていて、これだけ食べれば大丈夫というものらしい。従来のパスタに比べて糖質は50%オフで、カロリーは20%オフになっている。もちろんビタミン等の必要な栄養素はすべて含まれている。
たしかにこれなら、流動食とちがって料理になる。なぜパスタにしたかといえば、健康志向の高い人だけではなく、そうでない人に食べてほしいからとのこと。パスタなら普通の料理として食べてくれる、ということだろうね。
だけどボクは、やっぱりこの食品には惹かれない。完全なものを食べるという発想が、どうしても好きになれない。
何を持って完全だと言い切れるのだろう? 栄養学の常識なんてコロコロ変化するし、人によって必要な栄養素はちがうはず。人工的に合成された『完全』という概念を押し付けられると、かえって『不完全』を感じてしまう。ボクはひねくれているからねw
自分が心から食べたい思うものを、食べればいいと思う。完全栄養にこだわる必要性をまったく感じない。
食事の栄養なんて、少しくらい不完全でいいと思う。不完全だから完全にする楽しみがある。それは『どのようにして』食べるか? ということ。
昨日、たまたまこんな本を読んだ。
『私が最近弱っているのは、毎日「なんとなく」食べているからかもしれない』小倉朋子 著という本。
この本では『何』を食べるかについても書かれているが、もっと重点を置かれているのは『どうして』食べるかということ。
どんな素材を使おうと、家族がいなくて一人の食事だとしても、大切なのは食べ物に対する『敬意』だと書かれている。食材に対するリスペクトを大切にするならば、当然ながら食事の時間を無益な時間にしてはいけない、と著者は記している。
そのとおりだと思う。完全栄養食という言葉の聞こえはいいけれど、一歩まちがえれば何も考えなくなる。機械的にそれさえ食べればいい、と思ってしまうかもしれない。それでは食事ではなく『エサ』になってしまう。
今日の自分の体調はどうだろうか? 何を身体は欲しているか? 冷蔵庫にある材料を使いきれるかな? 今日外食するなら、あの店がいいかな?
そんな不完全な要素をいっぱい集めて、どうすれば完全に近づくかと考える時間を、ボクは失いたくない。悩みながら食材を選んで料理をしたり、その日のベストのお店を選んだりして、家族や友人との時間を大切にしたい。
それこそが食材に対するリスペクトだと思う。自分の頭を使って試行錯誤することが、何より大切だと思う。
だからボクは、完全栄養食なんて必要ない。ジャンクフードだって、いつ、どこで、誰と食べるかで、身体も心も幸せにしてくれるからね。
特定の食材に完全を求めるのではなく、『今』の自分に必要なものを求めていきたいと思う。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。
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