SOLA TODAY Vol.188
擬人化というのは、人間だけがもつ特別な能力だろう。植物や動物が話したり、場合によっては山や川が語ることだってある。もちろんフィクションの世界だけれどね。
でもそれは人間が介入することによってしか表現できない世界。ボクたちの意識を通過させることによって、初めてイメージが広がっていく。
植物や動物がコミュニケーションをとっていないという意味じゃない。人間が使う『言葉』を介して意思の疎通をはかっていないということ。
ところがまるで擬人化したように、人間でないものが独立して会話している記事を見た。それは驚きだけでなく、言葉にできない親しみを感じる会話だった。
「5階でドアを5.5秒開放しました」「了解です」IBMのAI「ワトソン」今度はエレベーターに知能を吹き込む
会話しているのは、人工知能で有名なIBMの「ワトソン」とエレベーター。フィンランドのエレベーターメーカーと協力することで、24時間インターネットに接続されているエレベーターを発表している。
ワトソンといえば、昨年も大きなニュースがあった。十分な経験のある医師が治療に行き詰まっていた患者について、適切な治療法を導き出したことで話題になっている。人間では読み切ることのできない大量の論文を記憶していることで、そのようなことが可能になっている。
とにかくこのエレベーターとワトソンの会話がシュールでキュート。記事から抜粋してみよう。
エレベーター「移動中。上方向です」
クラウド「承知しました」
エレベーター「フロアー0です。ドア、5.5秒開放です」
クラウド「了解」
エレベーター「下方向に向かっています」
クラウド「了解」
エレベーター「フロアー5でドアが5.6秒開放」
クラウド「5.6秒。チェック」
という会話を、人間の言葉を使って行なっている。これを音声としても聞くことができるらしい。
まるでSF映画の世界だよね。エレベーターが稼働するたびに、こうしてワトソンとやりとりしていると思うと、とても不思議な気分になってくる。人間が寝静まっている時間帯でも、この二人は密談を重ねていることになるよねwww
もちろん目的は、効率的なエレベーターの運用。修理やメンテナンスのタイミング、重量のデータなどが貯まることで、将来的にはエレベーターが自分でメンテナンスや修理の予約を、最適な日時で確保できると考えられているらしい。
人間がデータを採取して分析していたら、とても追いつけないほどの情報をワトソンは集めている。休むことも寝ることもなしに、1日24時間ずっとエレベーターと会話しているわけだけからね。
そのうちエレベーターに乗っている人の悪口やうわさ話をしているかも……。さすがにそれはないかw
こういう人工知能は、あらゆる分野に取り入れられていくはず。そのうちボクたちの知らないところで、世界中の機械が独自に会話するようになるかもしれない。もはやそれは擬人化とは言えない。人間がそれらの会話のすべてを把握することができないからね。
面白い時代になってきたなぁ。人工知能は嘘もつけるらしい。例えば車の渋滞を緩和させる場合に嘘をつくことができる。全ての人工知能が混雑していない道をアドバイスしたら、結局その道が渋滞することになる。だから人工知能同士が協力することで、あえて嘘をついて渋滞している道を勧める。
そのほうが道路全体として渋滞しないから。こうなると人工知能の嘘を見破ることが、人間にできなくなってくるかも。でも結果的に便利になるのだから、ボクはいいことだと思う。これからのこの分野に、大いに期待している。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。