SOLA TODAY Vol.189
ここのところニュースを賑わしているのが、金正男氏の暗殺のニュース。
たしかにメディアサイドとしては視聴率を稼げそうな話題だろうけれど、個人的にはこの続報にウンザリしている。まるでスパイ映画の謎解きを楽しむかのように、実行犯の人物像や黒幕の予想ばかりを繰り返している。
事実なんてわかるわけない。だから『暗殺』と言うんだよ!
それよりも同じ北朝鮮問題を報道するなら、もっと重要なニュースがある。例えばこれ。
なぜ中国は北朝鮮からの石炭輸入を停止したのか 変わりつつある中朝関係
先月の18日、中国が北朝鮮からの石炭輸入を今年いっぱい停止することを発表した。北朝鮮にとって石炭は輸出の3分の1を占めているから、この禁輸措置で日本円にして1180億円が吹っ飛ぶらしい。これは明らかに中国が北朝鮮に対して行った制裁だと言える。
度重なる核実験やミサイル発射に関して、北朝鮮に対する世界の世論は厳しい。ところが中国はこれまで制裁に対して消極的な態度を示していた。だけどこのような制裁措置を発表するということは、さすがの中国もプッツンしたのかもしれない。
金正恩氏に政権が移行して以来、中国とはうまくいっていないのはたしからしい。特に核開発問題について平和的な解決を図らない金正恩政権に対して、中国は嫌気がさしている。グローバルな経済政策を進めている中国にとって、北朝鮮はお荷物になってきたのだろう。
今回の制裁はかなり厳しいもので、場合によっては北朝鮮という国家が崩壊するきっかけになるとのこと。ロイターによると、中国がこの勢いで貿易関係を解消して北朝鮮のライフラインを絶ってしまえば、簡単に国家が崩壊してしまうだろうと予測されている。
でも中国としてはそこまでできない事情がある。
北朝鮮が崩壊すると、大量の難民が国境を越えて中国に押し寄せてくるのがその理由のひとつ。おそらく大混乱になってしまうだろう。
もうひとつは朝鮮半島が韓国によって統一されることで、何万人という米兵が中国の国境に接することになる。それは中国にとって安全保障上の悪夢になってしまう。
だから今回の制裁は、北朝鮮に対する警告と見るほうが無難だと思う。あまり無茶ばかりすると本気で怒るよ、と駄々っ子を叱りつけているようなものかもしれない。だけど北朝鮮にとってGDPの5%に相当する制裁なので、結局は一般国民がそのとばっちりを受けることになる。
この記事によると、中国は北朝鮮の崩壊も視野に入れているらしい。今回の暗殺事件がそのきっかけになっている。暗殺が発覚したと同時に、中国軍が国境に集結しているという報道があった。おそらく事実だと思う。
とりあえず中国政府は否定したけれど、「安全保障上の環境において生じるニーズに従い、中国軍は国家の安全と主権を守るために必要な手段を講じる」と述べている。つまり北朝鮮が崩壊したらマジで軍隊を投入するよ、と言っているのと同じ。
今のままの北朝鮮の状態なら、そんな時期が来るのはそれほど遠い未来じゃないかもしれない。そうなると韓国も日本も巻き込まれてしまう。暗殺の犯人探しをいつまでもテレビでやっている時間があるんだったら、このようなニュースをしっかりと報道してほしいと思う。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。