めちゃ怖い心の声
今日は久しぶりに厚手の上着を取り出した。もう必要ないかと思った瞬間もあったけれど、やっぱりお彼岸あたりまでは冬が残るのかなぁ。
昨日は雪が降っていた神戸だけれど、今日もまだまだ六甲おろしが健在。冷たい季節風が吹きつけるので、身体を縮めながら歩いていた。
そんな寒いなか春がないかと探していると、さすがに3月なので簡単に見つかる。
早咲きの桜が開花していた。まだ2〜3分咲きという雰囲気だけれど、来週には満開になると思う。本格的な春はもうすぐだね。
あまりに寒いので、この桜もちょっと驚いているだろうな。きっと「さむっ!」と思っているはず。
だけど植物は言葉という概念を持っていないから、人間のように言葉で寒さを表現することはない。だとしたら、彼らの心のなかはどのようになっているのだろう? 気候の変化について何か感じているはずだけれど、植物が感じている感覚を体験してみたいなぁと真剣に思う。
でも植物についてはそう思うけれど、人間の心のなかは知りたくないよね。他人からすれちがいざまに心の言葉が聞こえてきたら、小一時間散歩するだけで卒倒しちゃうかも。
人間は楽しいことを考えているだけじゃないので、めちゃ怖いことになると思うwww
そんな心の声をモロに聞くことができるのが小説。複数の人間の心の声が飛び交う怖〜い小説を読んだ。
『ユートピア』湊かなえ 著という本。
とても穏やかな雰囲気で始まる小説。東京から離れた鼻咲町という架空の港町が舞台。
この町で生まれ育った菜々子、夫の転勤でこの町にやってきた光希、そして新しい人生を求めてこの町で陶芸の釜を開くことになったすみれ。その三人の女性が織りなすドラマだけれど、菜々子の娘の久美香と、光希の娘の彩也子という二人の小学生が関わることで複雑な展開になっていく。
新しい小説だからネタバレはしないのでご安心を。
町の催しで起きた火事をきっかけにして、3人の女性はあるプロジェクトを発足させる。善意で始めた企画だったけれども、雑誌やテレビで話題になると同時に、周囲のやっかみが生まれてくる。特に田舎町のネットワークを舐めると怖いことになる。
その背後で、過去に起きた強盗殺人事件が関係してくる。ほのぼのと始まった小説だけれど、湊さんの作品だからヤバいことになると思っていた。以前に『告白』という作品を読んだとき、予想外の展開でぶったまげたから。
それは予想どおりだった。いや、予想以上だった。
3人の女性の目線で書かれているので、それぞれの心の声がリアルに聞こえてくる。友人であるはずの人間に対して、腹のなかで抱えている黒い塊がグツグツと煮えたつ音が聞こえてくるような小説。
ラストで驚く展開になるけれど、そのあたりはだいたい予想できる。でも最後の最後にもっと怖い心の声が用意されていた。
それは光希の娘である小学校4年生の彩也子の日記。隠されていた彼女の日記の文章が最後を飾っている。そこに書かれた真実と本音にゾッとする。
母親たちの心の声もかなり怖いけれど、ある意味最高に怖かったのは子供の本音かもしれない。
なぜかといえば、大人の本音には悪意がある。それは自分を守ろうとする本能のような悪意だ。
でも子供の心の声には悪意がない。それだけに怖い。善悪の概念を超越しているから、その行為そのものが露骨に浮き立つ。読み終わると同時に背筋が寒くなる小説だった。さすが湊かなえさん。彼女の作品はすべて読破したいと思っている。
先ほど書いた『告白』という作品が映画化されている。先日BSで放送していたので録画しておいた。あの怖い小説の世界が、どのような映画になっているんだろう。確か松嶋菜々子さんが主演していたはず。めちゃ楽しみ〜!
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。