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高羽そらさんインタビュー

手紙が織りなす人間模様

昨日もかなり寒かったけれど、今日は完全に冬。

 

冷たい季節風が吹き荒れていたので、向かい風だと思うように前へ歩けないほどだった。そして青空が見えているのに、その風で飛ばされてきた雨粒が顔にあたる。

 

こんな天気の日は虹が見えるだろうなぁ、と思っていると、やっぱり出た。

 

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午後3時半ごろに仕事をしていてふとバルコニーを見ると、こんな虹が出ていた。

 

予想はしていても、やっぱり実際に見ると嬉しいものだね。心がワクワクしてきて、何かいいことが起きそうな予感に満たされる。

 

そんな虹と同じようにワクワクするものが、ボクの若いころにはあった。

 

それは手紙。

 

今のようにメールやLINEなんてものは想像の世界でさえ存在しない時代。好きな女の子に気持ちを伝えるには、当時は手紙しかなかった。

 

ボクが初めてラブレターを書いたのは、小学校6年生の秋。学校の教室からパクった原稿用紙で書いた手紙だった。

 

幸いにもいい返事をもらえることができて、その後に交際が続いた。二週間に一度くらいのペースで手紙をやり取りするので、自宅のポストに届くのを心待ちにしていた記憶がある。

 

同じクラスにいても、交際していることは一部の友人以外は秘密。学校ではただのクラスメイトだった。だからこそ手紙が嬉しい。封を切るときのドキドキ感は、今の子供たちには理解できないだろうなぁ。

 

そんな手紙をテーマにした小説を読んだ。あまりに素晴らしく印象に残る作品なので、読了した昨晩は神経が高ぶって深夜まで眠れなかった。

 

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『往復書簡』湊かなえ 著という作品。

 

3つの短編というか、中編の作品で構成されている。出てくるのは手紙のみ。

 

普通の小説のように会話文や地の文がない。登場人物の手紙のやり取りだけを記すことで、物語を進めている。他人の手紙を盗み見しながら、そこに起きる出来事の深淵に引き寄せられていくという構成になっている。

 

湊さんといえば『告白』という有名な作品がある。これも今までの小説のセオリーをくつがえすような作品だった。だからこんな手法を思いつかれるのかもしれない。

 

最初は高校の同級生たちの手紙。放送部の部員同士が結婚することになり、久しぶりに仲間が集まることになる。ところが一人だけ出席していない女性がいた。社会人になってモデルをしていた女性だけれど、5年前に地元の友人たちに会って顔に大怪我をしたらしい。

 

海外勤務の夫と結婚したことにより、その事情を知らずに帰国して披露宴に参加した女性が、その出来事の真相を探る手紙が中心になっている。なぜ怪我をした友人は披露宴に出席しなかったのか? いったい5年前に何があったのか? 

 

主人公が友人たちと手紙をやり取りすることで、やがてその真相が明らかになっていく。そして最後の手紙には、大どんでん返しが隠されているという設定。帰国中でパソコンを持ってきていない、さらに機械音痴の主人公なので、手書きの手紙を使うという理由になっている。

 

同じように2つの物語が手紙によって進んでいく。小学校教師を定年になった女性教師が、自分の教え子にあることを依頼する手紙で始まる。その教え子と出会う前の別の小学校で、その女性教師は生徒と休日にピクニックを企画する。

 

そのときに事故が起きる。子供の一人が川で溺れ、それを助けようとした女性教師の夫が死んでしまう。そのピクニックに同行していた6人の生徒たちについて、成人した現在どのように暮らしているか調べて欲しい、という依頼だった。

 

そうして1人ずつと会い、その報告が手紙でなされる。これも最初の作品と同じように、その事故にはとんでもない事実が隠されていることがわかる。そして、どうしても最後まで会えなかった女性がいる。その女性の正体が、調査をしている教え子の人生に大きな影響を及ぼすという物語。

 

最後は30歳になる同級生の恋人の物語。結婚間近だったが、彼は突然海外のボランティア活動に参加することになる。治安の悪い国で、2年間は戻ることができない。メールや電話でやり取りすると、彼女はすぐにでも会いたくなってしまう。だから手紙をやり取りすることにした。

 

普通のカップルのように見えるが、二人は中学校時代の同級生で、15年前大事件に巻き込まれている。同じ学校の生徒が二人も亡くなっている。一人は火災で、もう一人は自殺で。

 

そして彼女もその火事の被害にあっている。自殺をした男性生徒が、ある小屋に男性生徒と彼女を閉じ込めてしまい火をつけた。その彼女を火の中から助けたのが、現在交際している彼だった。

 

でも彼女は記憶障害を起こしている。当時の事件を詳しく覚えていない。ところが手紙をやり取りする過程で、彼女はその事件の記憶を取り戻す。それはあまりに恐ろしい記憶だったという話。

 

ラストの3作目があまりに強烈なストーリーだったので、ボクはいまだにショックを受けている。ハッピーエンドの予感で終わるのだけが、せめてもの救いだったかも。とにかくとんでもなく素晴らしい小説だった。

 

こうして思うと、手紙というものが持っているパワーというのはすごい。手に届くまでかかる時間と距離が、そのパワーを熟成させているのかもしれないね。とにかく湊さんは、本当に素晴らしい作家だと思う。まだボクのハートがジンジンしているからね〜!

 

decoration/dcr_emoji_238.gif『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。

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高羽そら|たかはそら(作家、小説家)プロフィール

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高羽そら(たかはそら)
今後の目標:毎年1つの物語を完成させたいと思います。
生年月日:昭和37年5月10日
血液型:A型
出身地:京都市

【経歴】
1962年京都市生まれ。数年前に生活の拠点を神戸に移してから、体外離脱を経験するようになる。『夢で会える 体外離脱入門』(ハート出版)を2012年1月に出版。『ゼロの物語Ⅰ〜出会い〜』、『ゼロの物語Ⅱ〜7本の剣の守り手〜』、『ゼロの物語Ⅲ〜次元上昇〜』の3部作を、2013年7月〜12月にかけて、オフィスニグンニイバよりAmazonのKindleにて出版。現在も新たな物語を執筆中。

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