SOLA TODAY Vol.210
ネット社会において、よく話題になるのが炎上。
炎上商法などという言葉があるように、あえて炎上させることでPR効果を狙うこともある。
以前ある本で読んだことがあるが、効果的な炎上というのは意見が半々に分かれるようなものがベストらしい。そうすると自分が一方的にディスられることはないし、相反する意見を持つ人たちどうしが、勝手に議論して炎上させてくれるから。
しかし炎上というものは、一般の個人にとっては耐え難いものであることがほとんど。だけど不用意な発言によって、著名人ではなくても炎上に巻き込まれてしまうことがある。そんな最強で最悪の炎上事件が記事になっていた。
その人はジャスティン・サッコという名の女性。南アフリカへの空の旅へ向かう際、軽い気持ちでツイートした。それは乗り継ぎのために立ち寄ったイギリスのヒースロー空港でのこと。
「アフリカに向かう。エイズにならないことを願う。冗談です。言ってみただけ。なるわけない。私、白人だから!」
たしかにこれはまずいよね(汗)とくに最後の文章。明らかな人種差別的発言で、エイズは黒人しかかからないような意味にとられてしまう。
実際には人種差別を意図したものではなかったらしい。むしろ逆で、人種差別主義者たちの言いそうなことを真似し、揶揄したつもりだったのだ。普段から彼女の人柄を知る人であれば、誤解するはずもなかったとのこと。ちょっとした冗談のつもりだった。
でもコメント等も入らず、がっかりして飛行機に乗り込んだ。搭乗中はスマホを切るので、何もわからない。しかしそのあいだ、とんでもないことになっていた。
ケープタウンに着いて携帯の電源を入れると、彼女を非難するリプライが殺到していた。11時間のフライトのあいだ、彼女のツイートは世界のトレンドで第1位になっている。当然ながらそのほとんどが目を閉じて、耳を塞ぎたくなるような言葉ばかり。
その波及は彼女が勤める職場まで及び、会社が彼女に連絡が取れない、とまでツイートする事態になった。もうどうしようもない状態。
彼女がどれだけ弁明しようと、悪意はなくて逆に人種差別を非難するものだと叫んでも、世界中の誰も耳を傾けない。一度悪人だと決めつけられ、一斉攻撃が始まると止めることはできない。
むしろあえて曲解することで、非難をあおる人もいる。だから彼女を擁護する声なんか、あっという間にかき消されてしまう。
最終的に彼女は仕事を失った。社会的に破滅を受けた状態で、再就職もままならない。なぜなら新しい雇用主が彼女の名前を検索すれば、このツイートとそれに感ずる非難が否が応でも目に入ってしまうから。
怖いよねぇ。これは誰にでも起こりうることだと思う。そして非難したり批判した人というのは、いたって普通の人の可能性が高い。むしろ倫理観や正義感の強い人であると思う。
でもその人たちは、まさか自分がひとりの人間を破滅させてしまった「加害者」だとは思わないだろう。それほど無責任にネットでの意見は垂れ流しになっているということ。
炎上を利用できるだけの才覚があるならいいけれど、普通の人は手を出さないほうがいい世界。それどころかこんなことに巻き込まれないよう、あるいは加害者にならないよう、自分の文章が他人に与える影響を判断できる想像力を育てるべきだと思う。
このサッコという女性は、そのあたりの想像力が少し欠けていたのだろう。独りよがりの判断で品のない文章をツイートしたばかりに、人生を棒にふってしまうことになった。ネット社会の現状を知ることができる、とても興味深い記事だった。
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