時代劇は『今』を写す鏡
少し雲が多いけれど、今日も見事な晴天。過ごしやすく、気持ちのいい気候が続いている。
昨日の写真だけれど、八重桜が綺麗な季節になってきた。でもヒノキ科の花粉は絶好調だから、アレルギーのある人は大変だよね。
ボクは花粉症じゃないけれど、2ヶ月に1度くらいの頻度で鼻炎になることがある。
いろいろ検証してみたけれど、急激な温度変化に鼻の粘膜がやられるらしい。建物のなかと外に温度差があると、鼻がつまってくる。放置しておくと、頭痛が始まって仕事にならない。
それにそなえて、とっておきの市販薬を常備している。以前にもブログで書いたことがあるけれど、めちゃよく効く。マジで劇的に効く。
だが反比例するように、強烈な眠気に襲われる。だから仕事が残っているときや、自動車の運転をするときは絶対に飲まない。たいていは就寝前2時間くらいに服用して、そのまま一気に眠る。
眠くなるのを嫌がっているのじゃない。むしろ楽しんでいる。ゆえに依存症にならないよう、できるだけこの薬を飲まないようにしている。昨晩は久しぶりに鼻炎になり、この薬を使った。だから夜はバタンキューで眠ってしまった。その異常な感覚がたまらなく楽しいw
ただし問題は、効いている時間が長いこと。ボクの場合15時間くらいは効果が残るので、今日の午前中は仕事が辛かった。昼食をとってようやく普通の状態に戻ったという状態。
いつもこの薬を飲むと思う。もし先日のカナダのように大麻が解禁になっても、ボクは手を出さないほうがいいだろう。大麻に依存性がないと言っても、きっとコントロールできなくなって、依存症のような状態になりそう。ましてや他の禁止薬物は、言わずもがな。
なぜこんなことを書いているかといえば、次のシーンのように薬を飲ませる医師の映画を観たから。
『赤ひげ』という1965年の日本映画。
江戸時代に実在した幕府設立の小石川養生所を舞台にした物語。主演は三船敏郎さんと加山雄三さんで、監督は言うまでもなく黒澤明さん。
3時間を超える長い作品なので、昨日と今日の2日に分けて観た。何度も観ているけれど、やっぱり感動して泣いてしまう。これほど心温まる映画はないと思うなぁ。
黒澤監督の作品としては活劇的なものが好きだけれど、これは別の意味で大好きな映画。『生きる』と並んで、人間の心をゆさぶる名作だと思う。
有名な作品なので内容は割愛するとして、この作品は単なる時代劇ではない。いや、時代劇そのものが、過去を描いたものじゃないとボクは考えている。
時代劇や時代小説は、物語の題材として古い時代を使用しているだけ。もちろん時代考証は必要だし、登場人物は当時の人間でないと考えられない行動をとったりする。
だけど作家や映画監督が本当に描きたいのは、『今』だと思う。時代劇という舞台を借りて、『今』という世界を写しているはず。
この映画の場合なら、昭和40年の日本を描いたものだろう。そしてそこに貫かれている精神は、平成の今でも無視できないものだと思う。
三船敏郎さんが演じる『赤ひげ』が、こんなセリフを言う。
「病気の影には、いつも人間の恐ろしい不幸が隠れている」と。
この物語は三船敏郎さんが演じる新出と、加山雄三さんが演じる保本という2人の医師を通じて、多くの人間のドラマがオムニバスのように描かれる。それは江戸時代の出来事としてだけではなく、今に置き換えることができる。
『赤ひげ』は、社会が貧困や無知といった矛盾を生み、人間の命や幸福を奪っていく現実に怒り、「貧困と無知さえ何とか出来れば病気の大半は起こらずにすむ」と若い安元に熱弁する。
だから『赤ひげ』は怪我や病気そのものを治療するだけでなく、その人間の心も癒そうとする。先ほどアップした映画の1シーンは、ボクが大好きなシーンのひとつ。
この少女は今で言うところのネグレクトを受けた状態。身体以上に心が病んでいる。安本が少女の心を開いていく過程は、何度見ても涙が止まらない。
状況はちがうけれど、現代人も同じ問題を抱えていると思う。だからこそ。医療というのは肉体だけでなく心を癒すことだ、というこの映画の精神は、今でも通用する。こういう映画を、本当の名作というのだろうね。
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