お金の匂いに敏感な人たち
久しぶりに本降りの雨のなか、買い物に出た。人間にとっては少しウザい雨だけれど、植物たちには春の恵みだと思う。
新緑の木々たちが喜んでいるように見えたし、ツバメでも雨のなかを元気に飛び交っていた。みんな生き生きしてるね。
このツツジも雨に濡れて、うれしそうに見えた。明日はいい天気になるそうだから、今日の雨水をたっぷり含んで、太陽の光を栄養に変えていくんだと思う。そして明日になると蜂たちが、この花の蜜を求めて飛び回るのだろう。
ボクも子供のころは咲いているツツジを摘んで、その蜜を吸った。意外に美味しいんだよね。きっと今の子供たちはそんなことしないのだろうなぁ。公園の花を摘んだからと、芸能人が公式に謝罪するよう時代だからね。
その代わり、花の蜜を求める蜂のように、お金の匂いに敏感なのが人間。そんなずば抜けた嗅覚を持つ大人が、若者の人生を翻弄するという映画を観た。
『ロード・オブ・ドッグタウン』という2005年のアメリカ映画。
アメリカ西海岸のドッグタウンという街で、スケボーのブームが起きる。1970年代のこと。サーファーだった少年たちが、スケボー時代が来るのを予感したスキップという男が作ったチームに所属することで、全米にスケボーブームを巻き起こす。
実話を映画化したもので、その３人はジェイ、トニー、ステイシー。この映画は彼らのアドバイスにしたがって制作され、映画監督でもあるステイシーが脚本を書いている。
なんとなく観始めたけれど、途中から引き込まれてしまった。またたく間にロックスターにようになっていく３人。それはお金になることを知った大人が近づいてきたから。
だけど３人はそれぞれちがった道を進む。トニーはスケボーの初代世界チャンピオンになり、ステイシーもランキング１位を獲得してから会社を興し、今は映画監督になっている。だけどジェイは貧困から抜け出ることができず。麻薬漬けの生活を送っていたりする。
だけどラストシーンで３人の友情が、決して失われていないことがわかる。それがうれしくて、泣けてきた。スケボーの技術は同じレベル。だけど生活環境や考え方のちがいで、同じ人生を歩むことはできない。
それでも彼らの本質は、水が抜かれた他人の家のプールに不法侵入して、スケボーの技術を競っていたころと変わらない。そう感じさせてくれるラストが、心に強く残っている。
そしてボクがうれしかったのは、スキップ役を演じたヒース・レジャー。『ダークナイト』で彼が演じたジョーカーを、今後越える人は出てこないと断言できるほど、鬼気迫る素晴らしい演技だった。惜しくも2008年に28歳で亡くなっている。
このスキップ役のヒースもすごく良かった。せっかく自分が育てたチームのメンバーが、もっと強い資本力のあるスポンサーに奪われていく。絶頂からどん底に落ちていく悲哀を、見事に演じていたと思う。
そして音楽がいい。70年代のロックがガンガン流れている。ジミ・ヘンドリックス、ディープ・パープル、デヴィッド・ボウイ、ブラックサバス、ロッド・スチュアート等のそうそうたるメンバーだ。これだけでもボクは興奮してしまう。
あまり知られていないかもしれないけれど、とっても素晴らしい映画だった。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。
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