SOLA TODAY Vol.294
高度経済成長時代に少年期を過ごしたボクの世代は、日本という自分の国に対して思い込みがある。
アジアではリーダーとして存在感を示し、世界的にも経済大国として認知されている。その感覚が、今でもどこかに残っているような気がする。
だけどとっくにそんなものは崩壊している。国家というものは経済成長がある段階を過ぎると、飽和状態で行き詰まってしまう。そして高齢化問題を抱え、経済を主導する若い世代が少子化によって減ることで、将来の見通しが立たない。これは他の先進国でも同じこと。
今やシンガポールはアジアの経済大国であり、以前は発展途上国と言われていた国がそれに追随している。そして現代の東アジアで最大の経済大国と言えるのが中国。
現代の世相をモロに反映していると感じた記事を読んだ。
ショッキングなタイトル。中国人にとって、今の日本はまだ「20世紀」のままらしい。
32歳の中国人で、5年前までは日本の講談社で働いてた女性がいる。この記事の著者がその彼女と再会してかなりショックなことを言われた。
日本の大手IT企業の中国事業の統括者として再来日した彼女が、真っ先に買ったもの。
それは財布だった。
今や中国では数年前から、スマホ決済が当たり前。スーパー、コンビニ、タクシー、レストラン、そして屋台までスマホ決済とのこと。だから財布を持つ習慣がなくなっている。この女性の場合も、万が一スマホをどこかで置き忘れたときのため、10元札1枚をカバンの奥に忍ばせているだけ。
彼女はこう言っている。
「私は現金を使うなんて、20世紀の映画かドラマの世界のことと思っていました。だから北京から東京に引っ越したら、まるで21世紀の世界から20世紀の世界に舞い戻ったような気分になったんです」
ボクたち世代の感覚なら、アジア諸国は日本より物価が安いというイメージが強い。今やそれが逆転している。東京のレストランや住宅の家賃を含めた物価が、北京に比べて2割は安いとのこと。当然ながら日本の企業に転職したことで、給料も2割下がったらしいw
つまり日本は物価が安くて旅行に最適な観光国となりつつある。賃金が安いので、出稼ぎのために日本にやってこようとする外国人は減る一方。シンガポールで働くほうが、よっぽど高収入らしい。
ただその女性の言葉によると、東京には北京にないものが3つあるとのこと。静けさ、清潔さ、安全の3つ。これは日本人らしいよね。
その他にも、こんな例が書かれていた。著者が青山でランチをしているとき、近くの日本の大手商社に勤める中国人の会話が聞こえてきた。中国語だから誰もわからないと思って大声で話していたらしい。ところが著者には筒抜けで、それは日本人上司の悪口だった。
「まったく、うちの会社の幹部たちは、21世紀の世の中で、いまだに20世紀のような発想でいるんだから、やってられないよ。日本が多額のODA(政府開発援助)を与えて中国に経済支援を行っていたなどというのは、20世紀の話だろう。いまや中国(台湾)の鴻海(ホンハイ)がシャープを買収する時代だよ」
出た〜〜! ここでも日本人は20世紀だと言われている。その指摘は「当たらずとも遠からず」という、古いたとえどおりだろう。
日本が中国のようになる必要はないし、経済の流れとしてそれは難しい。だけど高度経済成長時代のイメージで中国を見ることだけはやめておくべき。もうそんな時代じゃない。
今や中国は経済大国であり、IT先進国として日本よりはるか先を歩んでいる。さらに軍事大国としての側面もある。そんな発展の裏側で、この記事では書かれていない中国の実情がある。それは極端な貧富の差。
多民族国家である中国は、国家として大きな問題を抱えている。国民の不満をガス抜きするために、あらゆる手段が必要とされている。そのなかでも近隣諸国に脅威を与えているのは、『侵略』という隠された意図だと思う。いや、今やそれは隠されていないかも。
いい意味で中国とウインウインの関係を保つことは、日本にとって欠かせないだろう。そのためには、過去の中国と日本の立場が逆転していることを認識するべき。この記事を読んで、ますますそのことを強く感じた。
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