SOLA TODAY Vol.347
領土問題というのは、なかなか複雑で理解しがたいところがある。うまくいきそうで、こじれてしまうことが多い。
昨年、安倍首相とプーチンさんが首脳会談を行い、北方領土問題に光明が見えるかという報道がなされた。ことが順調に進めば、ロシアとの和平条約も締結されるかも、と言われていた。
でも結果的にはこれからも話し合いましょう、という曖昧なことでフェードアウト。どうしてうまくいかないなのだろう、と頭をひねってしまった。
ところがその問題について、とても興味深い切り口で論じられている記事を読んだ。
なぜ日本はアメリカの「いいなり」なのか?知ってはいけないウラの掟
この記事を読むと、北方領土問題が解決しないのは当たり前だと思える。なんとなく想像していたことだけれど、はっきり突きつけられると戸惑ってしまうような内容だった。
1945年8月、日本はアメリカに降伏した。一時的とはいえ、他国の占領下にあった。もしかすると、日本はアメリカの州の一部になっていても不思議ではなかった。戦争に負けたのだから。
だけど国家としての独立性は保証され、天皇制も残された。これは日本の現状を把握したマッカーサーの英断だと言われているが、無条件でそのようなものを得たわけではないことは想像できる。
平和憲法と呼ばれている日本の憲法が、アメリカに押し付けられたものであることは事実だし、それ以外にも公表されていない密約があると言われている。この記事はそうした密約について語ったもの。これは著者の妄想や単なる陰謀論ではなく、公文書から導かれた事実とのこと。
その密約を知ると、なぜ北方領土問題が解決しないかすぐに理解できる。記事から抜粋してみよう。
『なぜなら、外務省がつくった高級官僚向けの極秘マニュアル(「日米地位協定の考え方 増補版」1983年12月)のなかに、
○ アメリカは日本国内のどんな場所でも基地にしたいと要求することができる。
○ 日本は合理的な理由なしにその要求を拒否することはできず、現実に提供が困難な場合以外、アメリカの要求に同意しないケースは想定されていない。
という見解が、明確に書かれているからです』
つまり北方領土が2島だけ返還されたとしても、そこにアメリカの基地は作りません、とロシアに対して明言できない。アメリカがそこに基地を作りますよと言えば、実質的には拒否できないということ。
ロシアにしてみれば、そんな条件を飲めるわけがない。絶対にアメリカの基地は作りません、という確約がなければ返還できないだろう。だから昨年の交渉はうまくいかなかったということ。納得だよね。
この密約を証明するかのように、東京のど真ん中にもアメリカ軍の施設があるらしい。六本木と南麻布に、それぞれ非常に重要な米軍基地「六本木ヘリポート」と「ニューサンノー米軍センター」というものがあって、非常時には米軍の拠点になるとのこと。
だから民主党政権時代の鳩山首相が、普天間基地の沖縄県外移転なんてことを言い出すのは密約違反になる。そもそもそんなことを言う権利は日本側にない。鳩山さんが失脚したのは、そのあたりに理由があるのかもしれないね。
だけどボクとしては、特に違和感がない。敗戦国としては当然のことだと思っている。本来なら植民地化されていても不思議ではない状況だったわけだから。
そして今の東アジアの現状において、米軍の存在は日本にとって必要不可欠になっている。もしこの密約を反故にして米軍を追い出すとすれば、一気に国家間のバランスが崩壊してしまうだろう。
先日2度目のICBM実験を行なった北朝鮮の行動に対して、いよいよアメリカは本気になっている。ほとんど報道されていないけれど、韓国に駐留している米軍とその家族を、特定の地域に移動させて集めている。つまりいつでも戦争を起こせる体勢を取るためだろう。
そこに中国とロシアが絡んでくるわけだから、日本なんて軍事的にはアメリカに頼らざるを得ない状況。戦後の密約なんて不当なものだから、米軍は日本から出て行けなんて、ボクにはとても言えない。
きな臭い東アジアの現状において、日本国民が平和ボケでいられることの理由を考えるべきだと思う。この密約に対して感謝することはあっても、非難できないというのがボクの本音。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。
コメント (0件)
現在、この記事へのトラックバックは受け付けていません。
コメントする