誰が音楽をタダにした?
少し蒸し暑さが戻った感の神戸。ちょっと動くと、すぐに汗ばんでしまう。それでも気温が低めなので、自宅にいるといい感じ。週間予報を見ると、次の週末は最高気温が30度を切るだろうとの予想。嬉しいよなぁ。
今日は先週の金曜日に「断水」のせいで中断された散髪に行ってきた。やれやれと思って終了するのをひたすら我慢していると、顔を剃ってもらっているときにおでこに激痛が……。
「あっ」という店員さんの声と同時に、おでこをティッシュで拭かれる感覚がした。どうやらカミソリで切ってしまったらしい。これ、たまにあるんだよね。
というのはボクのおでこにはツノがある。いや、もしかしたら宇宙人に埋められた金属部品かもしれないし、なんらかの突然変異で変身する前なのかもしれない。とにかく不思議な直径1センチくらいの突起物がある。
以前は小さかったけれど、ここ数年で成長してきた。さわると骨のように固く、金属っぽい触感がある。このおでこのポッチに、年に一度くらいはカミソリをひっかけられてしまう。今日は特にキツめに刃が入ったようで、かなり出血した。
ただでさえ散髪が苦手なのに、こういうことがあるとマジで行きたくなくなる。ついさっきまで、ヒリヒリしていた。何度も謝ってくださったので、もちろん笑顔で対応した。もしスルーされても、小心者なのでどっちみち何も言えないけれどね。
なんせシャンプー中に「かゆいところはないですか?」と訊かれて、正直に答えたことがない。だから「俺のおでこを切りやがって、どないしてくれんね」なんてことは口が裂けても言えない。そんなことが言える太い肝っ玉が、メルカリで売っていないだろうか?
さて、昨日はめちゃくちゃ面白い本を読んだ。
『誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち』スティーブン・ウィット著という本。
これはノンフィクションなので、完全な実話。だけど映画化して欲しいと思うくらい、相当に面白い本だった。
今や音楽はCDでさえ時代遅れになっている。ストリーミング配信が当たり前になり、音楽はネットを通じて聴くものになった。もしいまだに音楽をCDを買っているという人がいたら、過去の遺物になったLPレコードやカセットテープを収集している人と同じ立場であるのはまちがいない。
このノンフィクションは3つの方向から書かれている。
mp3という言葉を聞いたことがある人は多いだろう。これは音楽データを圧縮するもので、人間の耳では捉えられない音域を排除することで、データの量を小さくするもの。ボクはこのmp3の音源でよく音楽を聴いていた。
この方式を利用することで、1枚のCDに12枚分のデータを書き込むことができる。ネットが普及することで、音楽データをやり取りすることが増えた。だけどCDのデータそのままを送ると、多大な時間と通信費が必要になる。それで発明されたのがmp3。3つの方向のうちのひとつは、このmp3を開発した人たちが取り上げられている。
2つめは、音楽を作っている立場の人。その最高峰に立つのがレコード会社。世界中の著名なアーティストを傘下に収めたユニバーサル・ミュージックのCEOたちを中心とした物語。
そして最後がmp3を利用することで、音楽を盗んだ人たち。いわゆる海賊版の制作者たちで、彼らが逮捕されるまでの経緯が語られている。発売前のCDがリークされる場所はいろいろある。評論家やラジオのDJなどにも配られるし、店頭に並ぶまでの配送ルートでの盗みもある。
だけど最も多かったのはCDを製作している工場。そこで働く男性は、なんと2000枚以上のCDを発売前に盗んでネットに流していた。もちろん単独犯ではなく、組織的な犯行だった。ここまで規模の大きいものだとは、この本を読むまで知らなかった。
最も影響が大きかったのはmp3だろう。これがなければ音楽をネットに流すことができず、CDは現代でも貴重な音楽メディアとして残っていたかもしれない。だけどネットの登場は、いずれこうした結果を生んだと思う。
ボクが利用しているApple Musicだって、この本の事件を経験して生まれてきたもの。物理的なCDが消滅することは避けられず、かといって音楽をタダで垂れ流しにさせるわけにはいかない。そこで音楽の発信サイドが構築したシステムが、定額の聴き放題ということ。
音楽業界は、すべてのエンターテイメントの先駆けとなっている。つまりボクが関わっている書籍の世界も、同様の事態を迎えている。もともと文字データはCDのように圧縮する必要さえないから、さらに電子化されて流出しやすい。
これからのメディアのあり方について、真剣に考えさせてもらえる内容だった。でもとにかく、めちゃめちゃ面白い。音楽ファンなら、ワクワクする読み物としても最高だと思うよ!
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。