SOLA TODAY Vol.375
図書館というものに対して、ボクはまったく相反する二つの考えを持っている。
一つは大量に本を読む立場として、金銭を負担することなく乱読できることの感謝。これは利用者としての視点。
もう一つは書き手の立場として、『無料貸本屋』である図書館に対する不満。これは創作者としての視点。
もし財布のことを気にしなくていいとしたら、一つ目の考えは霧散してしまう。だけど二つ目は消えない。本が売れなくなり、書店が消えて行く現状において、現在の図書館の悪影響は無視できない。
図書館での利用者数を伸ばすために、新刊をすぐに発注する。それも人気作品の場合、自治体単位で大量に購入する。本来なら書店で本を買ってくれるはずの潜在的な読者を、図書館が奪っているのは事実。
そして現在は電子書籍の時代。日本より一歩先を行っているアメリカでは、図書館で新しいシステムが稼働している。
図書館のカードがあれば、Kindleの電子書籍も“無料”で手に入る
アメリカではすでに、ほとんどの図書館で電子書籍での貸し出しが行われている。図書館カードを申請して個人番号を発行してもらうのは日本と同じ。あとはネットでアクセスして、Kindle等の端末にダウンロードするだけ。
貸し出し期限が来ると、自動的に端末から本が消える。これは利用者の視点から見れば、めちゃめちゃ便利なシステムだろう。なぜなら紙の本に関して必然的に伴う『予約待ち』というものがなくなる。アップロードされたら、誰でも待つことなくすぐに読むことができる。
ボクは以前からこんなシステムが実用化されることを願っていたから、決して否定的にとらえていない。日本でも一部の自治体でスタートしているらしい。そのうち大きな都市では導入されることになるだろう。
だけど創作者の視点からすれば、これはかなり問題。ますます本が売れなくなる。今までなら『予約待ち』にうんざりした人が、書店で本を買ってくれたかもしれない。でも電子書籍になれば、そういう人も無料の本を読むようになるだろう。
図書館というものの役割は、いろいろ考えられる。読書習慣を啓蒙するためであり、貴重な資料を保存する役割もある。だけど今のように、予算獲得のために利用者の増加だけを考え、新刊本を大量に購入するのはマジでやめるべきだと思う。
例えばレンタルDVDのように、発売から一定期間は新刊本や雑誌を図書館に入れない。あるいは購入数を制限する等の措置が必要だと思う。それでも電子書籍になれば数は関係なくなる。
だったらせめて、貸し出し期間に応じた印税を出版社や著者に支払うシステムにするべきだろう。音楽業界なんて、その点は進んでいる。カラオケで誰かが歌うたびに、使用料金が発生しているのだから。JASRACのやり方に多少の問題はあるとしてもねw
だけどもし書籍がそうなったとしても、書店が消えるのは止めらないよね。Amazonという取次を介入しない組織が入り込んできたことで、日本の書籍流通は根本的な見直しを迫られている。
この記事で紹介されているアメリカの図書館システムが日本で導入されるのは確実だから、著者、出版社、取次、書店、さらに印刷会社等を含めた本の供給サイドが、今後のあり方を真剣に検討する時期が来ているように思う。いや、もう遅いかも……。
『ゼロの物語』改訂版の配信サイトについては、こちらに一覧を設けています。登録されている電子書籍店でお求めください。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。
コメント (0件)
現在、この記事へのトラックバックは受け付けていません。
コメントする