SOLA TODAY Vol.382
ボクが4歳のころに公開された映画で、『ミクロの決死圏』という作品がある。小学生のときにテレビで放送されていたのを観たが、かなり強い衝撃を受けたのを記憶している。
アメリカに亡命した科学者が、脳内出血を起こす。だが手術ができない患部だった。そこで物質をミクロ化する技術を使って、小型の宇宙船のような乗り物に乗った医療チームが科学者の体内に入って病気を治すという映画。
ミクロ化できるのは1時間。それ以上経つと、元の大きさに戻ってしまう。異物として認定された医療チームを、科学者の白血球が襲ってきたりする。とにかくぶっ飛ぶような面白い作品だった。今のCGで映画化したら、もっとすごい映画になっただろうと思う。
そんな映画の出来事が、ついに現実のことになってきた。物質をミクロ化できるのじゃないけれど、この映画と同じようなことが実現しようとしている。
この記事では「体内病院」について次のように説明されている。
『薬剤などを搭載した超微細なカプセル(高分子ミセル)が体内を駆け巡り、がんやアルツハイマーなどの重大な疾患を、本人も気づかぬうちに早期発見し、その上治療までしくれるという革新的な仕組みだ』
まさに『ミクロの決死圏』の世界だよね。人間が人間の体内に入るわけじゃないけれど、特殊なカプセルがその役割を担ってくれる。ナノマシンという技術で、50ナノメートル(1ミリの5万分の1)の大きさに、病院で行う検査、診断、治療の機能を備えている。それも日本で開発されている!
そのナノカプセルが身体の異常を察知したら、直ちに診断を下し、内包している薬物を放出する。体内に潜んで常にパトロールをしながら、異常があれば駆けつけてくれる存在。まさに血液の白血球と同じ役割をしている。人間が持つ免疫機能を集約したものらしい。
詳しいことが知りたい人は、この記事を読んでもらうとわかりやすく書かれている。例えばがん細胞の場合、通常の血管壁より大きな穴が開いている。だから50ナノメートルのカプセルなら通過することができる。
そうするとがん細胞は異物が入り込んだと認定して、そのカプセルを外に出さないように閉じ込める。その段階で抗がん剤を放出するというもの。がん細胞が出す特殊な物質を見つけてこのカプセルは近づいてくるので、がん細胞だけを攻撃することが可能。
この技術が、もうすぐ実現可能なところまで来ている。人体を使った臨床実験も進んでいるらしい。これって、マジですごいと思う。
これはがんだけでなく、アルツハイマーにも応用される。脳細胞の特定領域に侵入して治療する。ボクの頭のなかでは『ミクロの決死圏』の世界しかイメージできない。あの映画がSFじゃなくなってきたということ。
今の医療なら、病院へ行って医師の診断をあおぎ、検査をして、ようやく治療が始まる。ところがナノカプセルなら、そのすべてを勝手にやってくれる。法律的なことを含めてあと追いになることも出てくるだろうけれど、世界の医療を変えていくきっかけになるかもしれないね。
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