SOLA TODAY Vol.389
北朝鮮問題で考えられる最悪のシナリオは、核兵器の使用ということ。特にあの国のように普通では考えららない行動を取る人物が権力を握っていると、とても安心できない。
それは今に始まったことではなく、いつの時代にも同じような権力者が登場している。そんな独裁的な判断がまかり通っている国において、最後の砦になるのはひとりの人間ではないだろうか?
ボクが生まれた1962年に、核戦争を防いだがひとりの軍人がいた。
ちょうどアメリカとソ連が冷静の真っ最中で、その激突の舞台となったのはキューバ。革命後のキューバにアメリカのCIAは訓練されたキューバ人亡命部隊を送り込んだが、失敗に終わる。
そこでキューバはソ連に接触することで、核ミサイルの発射場を国内に設置する。当時はアメリカがNATO諸国に配備した核ミサイルがあったけれど、ソ連から直接アメリカ本国に到達するミサイルはなかった。そこでキューバにその拠点を置こうとした。
そして実際にミサイル基地が建設されていることを知ったアメリカは、強硬手段に出る。これは今の北朝鮮問題と重なっているように思える。
ソ連の政府首脳からは、有事となれば核ミサイルの発射が許可されていた。アルヒーポフはその命令を受けた原子力潜水艦の副艦長だった。ミサイル基地の写真を確認したアメリカ政府は、潜水艦が近づけないようにキューバ周辺に機雷を投入する。
それを避けるためには海の底深く潜水するしかなく、ソ連本国からの無線連絡を受信できない。つまり核ミサイルを発射するかどうかは、潜水艦の指揮官に委ねられていた。だから政府としての意思を決定する、政治将校が潜水艦に同乗している。
原子力潜水艦の艦長、政治将校、そして副館長の3人がその決定を下せる。3人が合意すれば、潜水艦の核ミサイルを発射することが可能だった。アメリカと戦闘状態であると判断した政治将校は、核ミサイルの発射を決める。そして艦長も同意した。
だけどただひとり、副館長のアルヒーポフは反対する。どこかで浮上して、ソ連本国の命令を確認してからのほうがいいと言う。だけど他の2人は、そんなことをしていたらアメリカから先制攻撃を受けてしまうと訴える。
結局は自分の意見を引っ込めなかったアルヒーポフ。そして実際に浮上してソ連本国に確認すると、攻撃をしないで戻れという命令だった。もし彼が賛成していたら、確実に核戦争が起きていた。たったひとりの人間が、瀬戸際で核戦争を防いだという実話。
映画好きな人なら、どこかで聞いた話だと思うだろう。『クリムゾンタイド』という映画がある。これはアメリカ潜水艦の話で、艦長のジーン・ハックマンが核ミサイルの発射を決めるが、副館長のデンゼル・ワシントンは反対する。
映画は実話と同じ結果を迎えるが、キューバ危機で起きたソ連海軍での出来事を、アメリカ海軍を舞台にしたのがこの映画だったとのこと。
現代社会も同じような危機に直面している。だけどそんなひとりの力に期待できるような時代ではない。もし恐ろしい決定がなされたなら、防ぐことはできないだろう。そんなことを考えると、なんともやりきれない気持ちになってしまうなぁ。
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