SOLA TODAY Vol.398
人間というのは不思議な生き物で、心のどこかに闇を抱えている。普段から綺麗事を言って紳士淑女をよそおっていても、突然に深い闇が誘惑を仕掛けてくる。それがまた、その人物の魅力につながることもある。
例えば本を出版した場合、文豪と呼ばれる人であろうと、ボクのような凡人でも、他人の評価が気になる。そして1冊でも多く売りたい。
今の時代ならネットを使って、必死で宣伝することになる。だけど自分でやれる範囲には限界がある。いわゆるインフルエンサーと呼ばれている、何万人もフォロワーがいるような人と親友なら、なんとか頼むこともできるだろう。そうなれば大手のメディアでも取り上げてもらえる。
そんな必死な想いは、過去の作家でも同じだったらしい。とても面白い記事を見つけた。
文豪プルースト、自画自賛の書評掲載を金銭で依頼していた 手紙発見
フランスの文豪で、マルセル・プルーストという作家がいるらしい。ボクはまったく知らないけれど。
その文豪が、自らの著作である『失われた時』という作品の第1編である『スワン家のほうへ』に関して、とても面白いことをやらかした。
著名な友人に作品を絶賛する書評を書いてもらった。さらにそれをプルースト自らが都合のいいように編集して、新聞に掲載してもらうために金銭を支払っていたことが、直筆の手紙によりわかったらしい。
あれこれ含めて、現在の物価に換算して40万円くらいのお金を使っている。プルーストは裕福だったらしく、それくらいの負担はどうってことなかったのかもしれない。お金で評判を買えるのなら、利用しない手はないと思ったのだろうね。捏造でもなんでもいいから、本を売りたかったんだと思う
なんだか人間的でいいよね。文豪と呼ばれるような人でも、印象操作をするために必死になっていた。作品で勝負するだけじゃなく、メディアを利用することも考えていたということ。創作に関わる人は多かれ少なかれ、この気持ちはよくわかると思う。実際にやるかどうかは別にしてね。
出版不況と言われる昨今、大手出版社が出せばそれだけで本が売れるという時代じゃない。著者は個人商店と同じなので、作品を制作するだけでなく、顧客を見つけ、売り込むために全力で取り組まなくてはいけない。
キングコングの西野さんは、『えんとつ町のプペル』という本を50万部も売った。絵本では10万部を超えるだけでも奇跡と呼ばれているのに、彼は100万部を目指している。そのために西野さんは、あの手この手で想像を絶するような努力をされている。その結果、映画化の企画も進んでいるらしい。
『永遠の0』を書かれた百田尚樹さんも全国の書店を行脚して、お店に本を置いてもらえるように頼んで回られた。訪問された書店の総数は、一般的に作家が書店を訪れる常識をはるかに超えた数だったらしい。
そういえば『三丁目の夕日』という映画で、吉岡秀隆さんが演じる茶川という作家が、ファンレターを捏造するシーンがあった。これも同じ気持ちから出たものだろうね。ルール違反はダメだけれど、何かを売るためにはそれほど必死になるということ。とても興味深い記事だった。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。
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