SOLA TODAY Vol.401
働き方というものは、現代社会において大きな変革期を迎えている。ボクが子供のころは、雇う側と雇われる側が明確に分かれていた。
だから職業を選択する場合、雇ってもらうという前提がある。そしてその組織のなかで実績を残して地位を上げ、いつかは自分が雇う側になる。そんな図式が当たり前のように意識に刷り込まれていた。
だけど今はそんな時代じゃなくなった。大手の会社だっていつ倒産するかわからないし、終身雇用や年功序列という概念は消えつつある。その一方で会社を立ち上げることに関して、法律的な壁は低くなっている。昔のように多額の最低資本金を用意する必要もない。
それだけに競争は厳しくなる。組織の傘の下に隠れていると、その傘が失くなったたときにどうしていいのかわからなくなる。形式上は雇われている立場だとしても、意識としては常に雇う側でいる必要がある。つまりサラリーマンであっても、自営業者として自分をプロデュースすることが必要な時代になった。
それは芸能人と呼ばれる人でも同じ。最近柴咲コウさんが会社のCEOになったというニュースを見た。気になって調べてみると、彼女のインタビュー記事が見つかった。
NHK大河ドラマの『おんな城主 直虎』で主演されているので、柴咲コウさんの顔を見ない週はない。女優としては19年のキャリアでベテランの域に入っておられるし、歌手としてもミリオンセラーを出しておられる。歌はマジでうまいものね。
そんな柴咲コウさんが、昨年の11月に会社を立ち上げた。自分のファンクラブを進化させたもので、柴咲さんが地方の職人を訪ね歩き、「今まで欲しかったけれどもなかった」商品を開発し、実際に販売している。
この記事でその経緯が詳しく書かれているので、一読すれば彼女の意図が理解できる。素敵な生き方だなぁ、と感心してしまった。会社の立ち上げについて、柴咲さんはこう言っている。
「お芝居の仕事に関して言うと、思えば、たまたまスカウトされて、事務所に入ってわりとすぐに仕事をいただけるようになって……。言ってしまえば、受け身だったんです。必要としていただいているということなので、ありがたいですし、悪いことではないと思うんですけどね。ただ、その中で逃してしまったご縁もきっとあったのだろうな、と。
今までは、やりたいことがあっても悶々とするばかりで、それをアウトプットすることがなかった。でも今回、近しい人たちに『会社を作りたい』と話してみたら、『え、できるんじゃない?』と言われて、実際に会社を経営されている方をはじめ、多くの方からいろんなヒントをもらえて。それで気づいたんです。やりたいと思ったら口に出せばよかったんだ、と」
彼女だって、最初は雇われ側であって、ずっと受け身で仕事をしてきた。やりたいと思っていることがあっても、心のなかで思っているだけだった。だけで口に出すことで、具体的になっていく。今はそんな時代だということ。
有名な女優だからといって、思うように仕事ができるわけじゃない。他人任せにしていると、やりたくない仕事も受けざるをえなくなってしまうだろう。でも今は自分をプロデュースできる時代であり、逆にやらなければ未来が開けない時代でもある。
大河ドラマの主役という立場にあぐらをかくことなく、積極的にやりたいことに向かって突き進んでいく。彼女のそんな生き方を垣間見せてもらえる、とても素敵なインタビュー記事だった。
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