嵐のような人生に涙した
今年の秋は短かったような気がする。外を歩くとすっかり冬の気候。先日からダウンジャケットを着て外出している。帰りに登山のような坂道を登ると汗ばむけれど、それ以外はちょうどいいくらい。
今年は紅葉をじっくり見に行ってないので、買い物の帰り道に阪急六甲駅の南にある六甲八幡神社に立ち寄った。この神社の参道には、大木のイチョウがある、少し見ごろをすぎたけれど、まだまだ迫力満点だった。
奈良県の天河神社の鳥居正面にイチョウの大木がある。神木と言っていいほど立派なイチョウ。だけどこうしてこの写真を見ると、負けていないと思えるほど立派だよなぁ。もう1本大木のイチョウがあるので、遠方に出かけなくても紅葉を楽しめるから幸せ。
六甲山系もかなり色づいてきた。来週くらいは見ごろになるだろう。これまた自宅から見られるので、ついつい引きこもりになる。新神戸駅の北側には布引の滝があって、そのハイキングコースを歩くと素晴らしい紅葉が見られる。綺麗だとわかっているけれど、こんな調子だからなかなか行けないんだよねw
さて、ある実在女性の、すさまじい人生模様が描かれた映画をみた。心が揺さぶられて、涙が止まらなかった。
『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜』という2007年のフランス映画。
パリのベルヴィルというスラム街で生まれ売春宿で育った、世界的に有名なシャンソン歌手であるエディット・ピアフの生涯を描いた作品。これまでフランス映画ということで敬遠していたんだけれど、なぜもっと早く観なかったのかと後悔したほど素敵な映画だった。
この映画の素晴らしさは2点ある。ひとつは主演したマリオン・コティヤールの鬼気迫る演技。最初晩年のエディットが登場したとき、あの美人のマリオンだと思えないほど。実在の人物を演じているから、メイクから髪型までそっくりに似せているからだろう。
映画を観終わって調べてみると、本当に瓜二つ。おそらくマリオンはエディットのしぐさや歌い方も相当研究していたんだと思う。エディットはかなり個性的で破天荒な女性だから、徹底しないとつまらない映画になってしまうものね。
外国映画なのに、この作品でマリオンはアカデミー主演女優賞を受賞する。そりゃ取って当然だろうという演技だった。マリオンを主役に起用した時点で、この映画の成功は約束されていたと思う。
最初はどこかで見たことのある女優さんだと思っていたが、すぐに思い出せなかった。しばらくして気づいたのは『インセプショ』というレオナルド・ディカプリオが主演した映画。彼の妻という重要な役を演じていた女優さんだった。このエディット役で評価されて、ハリウッド映画に進出したんだろうね。
もうひとつの素晴らしさは、この映画の構成。過去と未来が複雑に織り交ぜられていて、エディットの人生模様がランダムに展開するように感じる。ところが緻密に計算された構成になっていて、エディットの人生がストレートに伝わってくる。
人間というのは死の間際に人生を振り返るとき、こんな風に感じるのだろうと思った。だから切なくて、切なくて。恋人が飛行機事故で死んだシーンなんか、涙なしでは見られなかった。『愛の賛歌』という名曲は、その恋人に捧げられたものだったんだね。
まだ観たことがない人がいたら、ぜひマリオンの演技と、この映画の素晴らしい構成を味わってほしい。本当にすごい映画だった。
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