SOLA TODAY Vol.463
国や自治体が行う規制というものは、既得権益者を守る意図で行われることが多い。表向きには国民や市民の生活を守るためと言いつつ、その言動と実態がかけ離れていることは多い。それは役所の立場を守るという、非生産的な公務員独特の行動習慣も悪影響を与えている。つまり事なかれ主義というやつ。
そういう意味で規制緩和には、壁がいくつもある。もっとも問題となるのは、国と自治体の意思統一ができていない場合。民泊解禁が近づいてきたというのに、まさにそんな状況が起きている。
国が定めた2018年6月の民泊解禁。これは2020年の東京五輪を控えて、増加するであろうインバウンドの来日に備えるためでもある。これまで旅館業法等の規制で守られていた領域に、政府が一歩踏み込んだことになる。
ところがそんな流れに逆らうように、自治体が条例によって規制を強めている。この記事の図表をコピペさせてもらった。
関東エリアでこれだけの条例が定められている。この記事でも取り上げられているけれど、世田谷はかなり厳しい。土日しか民泊を許可しないというもの。これではゆっくりと腰を据えて日本を楽しもうという観光客を排除することになってしまう。国が考えている方針と逆方向の条例になっている。
その理由は住民からの苦情。国は民泊を解禁したけれど、生活環境が悪化すると合理的に認められた場合、自治体によって条例を決めることができる。だからこんなバラバラの規制が登場するのだろう。
たしかに普通の住宅地に観光客が宿泊するようになると、騒音やゴミの問題等も出てくる。マンション等の集合住宅の場合、管理組合との合意も必要となってくる。住人にしては不特定多数の人に出入りして欲しくないという気持ちはよくわかる。
でも貸しっぱなしではなく、オーナーが同居することで質の高いサービスを提供している民泊経営者もいる。海外の観光客と友好関係を築き、日本の観光業に貢献している人もいる。これらの条例は、そんな人たちまで排除してしまうことになってしまう。
この記事を読んでボクが気になったのは、住民の反対の声が具体的に起きたトラブルではなく、心情的なものが多いこと。「外国人がうろうろして気味が悪い」という感覚だけの意見が自治体に影響を与えているらしい。その多くが外国人に対する偏見だということ。なんだか日本人の排他性が見えて、愉快ではない。
国とちがって自治体は住民の声が近い。だから問題が起きる前に、役所の立場を守るために腰が引けた条例を決めてしまうのだと思う。さらに既得権益を持っている旅館等の経営者からの圧力もあるはず。
日本の経済成長なんて、これからの未来に望むことは無理な状態。日本がこれから生きていく道は、大勢の海外の人たちが訪れたくなる観光立国としての地位を築くことだと思う。だからこそ民泊の解禁に、政府は踏み切ったのだろう。
規制することでトラブルを防止するのではなく、どうすれば受け入れることができるかを検討するべきだと思う。東京五輪はそのための絶好のチャンスだと思う。せっかく日本に来てくれた人たちをガッカリさせて帰したら、それで終わりだからね。来日してくれるリピーターを増やすためにも、自治体はもっと前向きな姿勢を持って欲しいなぁと思った記事だった。
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