遅咲きのヒーロー
12月に入って本格的な寒さが続いている。今日もよく冷えている神戸。
今年の春に書いた小説のリノベーションが、想定外の困難に直面中。ほぼ書き直しのような状態なので、脳みそがパンク寸前になっている。
身体は冷えているのに頭は過熱状態なので、どうも心身のバランスが悪い。こんなときは、ほっこりと心が温まる映画を観るに限る。まさにそんな温もりをもらえる映画を観た。
『ナチュラル』という1984年のアメリカ映画。1920〜30年代のアメリカのメジャーリーグを舞台にした映画。主演はイケメン絶頂時のロバート・レッドフォード。彼が演じるのはロイという天性の才能を持つ野球選手。
高校野球で活躍したロイは、シカゴカブスに呼ばれて新人テストに向かう。ところが滞在先のホテルでメンヘラ女性に関わり、銃で撃たれて瀕死の重傷を負う。医者からは野球を諦めるように通告される。
その16年後、低迷しているニューヨークの大リーグチームに新人選手がやってくる。補強を要請したオーナーの意向によってスカウトされた選手だった。それは初めてプロ野球の舞台に立つ35歳のルーキーであるロイだった。
素人チームで野球を続けてきたロイは、オーナーに白羽の矢を立てられる。だけどそれは実績を認められたのではなく、チームを負けさせるため。今年成績を残せなければ、監督のポップを解任できる。そんな悪意ある意図を知ったポップはロイを使おうとしない。
ところがチームはどん底。仕方なくロイを使うと、とんでもない才能を持った選手だとわかる。瞬く間にチームを上昇へと導き、優勝の可能性も見えてきた。そこでオーナーはロイを潰す作戦に出るという物語。
最終的にはハッピーエンドで終わる映画。オーナーの嫌がらせは悪質で、ロイは命がけで優勝を決める試合に臨む。過去の恋人とその息子との心の触れ合い、そしてプロ野球界の闇をうまく織り交ぜた内容で、見応えのある作品だった。
苦言を呈するとすれば、冒頭の銃で撃たれるシーン。あまりに唐突すぎてリアリティに欠ける。そしてラストシーンのシチュエーションがベタ過ぎたのが残念だった。本当の野球ファンだったら、出来過ぎの話としてシラけてしまう。
だって2点差で負けていて、9回の裏2アウトでロイがバッターボックスに立つ。ランナーは1塁、3塁。つまり一発出れば逆転勝ちというシーン。そして予想どおりにロイは3ボール、2ツーストライクに追い込まれる。その後は想像できるよね。感動するシーンだけれど、あまりに予定調和すぎたよなぁ。
ボクが大好きで10回は観ている野球映画に『メジャーリーグ』という作品がある。この作品もよく似ていて、意地悪なオーナーに対抗するため、弱小チームが優勝するというもの。だけどラストシーンは、観客の予想をくつがえす展開になる
主役のトム・ベレンシャー演じるジェイクが打席に立つ。2アウトだけれど3塁ランナーをホームに迎えたら優勝という場面。そこでジェイクはベイブルースのように、人差し指を外野スタンドに向けてピッチャーを挑発する。つまり予告ホームランをやらかした。
ピッチャーは怒りまくるし、スタジアムの観客の盛り上がりは最高潮に達する。ジェイクは足を痛めているので、ここはホームランしかないという状況。ピッチャーは振りかぶって、全力投球をしかけた。
ところがそれはジェイクの作戦で、彼がやったのは意表をつくセイフティバンド。相手バッテリーはあわてる。3塁ランナーはホームに向かうけれど、足を痛めているジェイクをファーストでさせばいい。ボールを取ったピッチャーは1塁に投げる。だけどジェイクは足を引きずって、間一髪で1塁ベースを駆け抜ける。その瞬間に優勝が決まるというエンディング。
野球ファンとしては、絶対的にこのシーンのほうが興奮する。『ナチュラル』という作品が残念なのは、優勝を盛り上げるシーンがベタ過ぎたところだなぁ。まぁ原作の小説がそうなっているのだから、どうしよもないよね。
だけど若いころのロバート・レッドフォードはマジでかっこいい。この映画を観ていると、久しぶりに『スティング』を観たくなってきた。そしてちょっと悪役でスポーツ記者のマックスを演じている、ロバート・デュヴァルの演技も最高。ボクの大好きな俳優さんなんだよねぇ。
ちょっとベタだけれど、観て損はない映画。特にラストシーンで心がポカポカになる。『フィールド・オブ・ドリームス』という映画を思い出す、とても素敵なエンディングだった。
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